顧客経験価値あるいは、カスタマーエクスペリエンスという用語が最近頻繁に使われるようになった。総論は正しいが、「顧客価値」と「顧客経験価値」は何が違うのか?顧客満足度は「顧客価値」と「顧客経験価値」はどう違うのか? 「顧客経験価値の向上」と「企業収益の拡大」の因果関係は? そのような疑問を論理的に解説する。
ただし反論する余地はある。たとえば徹底的に低価格で商品を提供し続け、論理的に満足、すなわち「頭で満足」した顧客を増やしていき、その顧客を価格という点での虜にさせて「推奨者」に仕上げていくことも可能でなないか、という論点だ。家電量販店の顧客戦略に似ている。ある程度は認めるが、いつまでも競合他社よりも「頭で満足」を続けていくことが困難であることには違いない。家電量販店がのきなみ、アマゾンや他ECサイトに価格面、すなわち「頭で満足」レベルで負け苦戦をしいられている現状を見ても分かる通りである。
したがって、一般的には、「心で満足する顧客の増加」→「推奨者の増加(NPSの向上)」→「企業の安定的な収益の確保」という因果関係が成立する。
では、心で満足する顧客をつくるにはどうすればいいのか?
■顧客経験価値の提供
ここまでブレークダウンして初めて「顧客経験価値」が登場してくる。
ずばり、この「心で満足する顧客」を作るためには「顧客経験価値」を向上させることが重要ということになる。
ではここで、再度「顧客経験価値」を定義してみよう。これまでの論理展開を踏まえて顧客経験価値を以下のように定義したい。
顧客経験価値とは、“品質”や”機能”といった商品・サービスそのものから合理的に評価できる価値ではなく、購入したり使用する過程の”顧客経験”から感情的に得られる価値である。
そして、“顧客経験価値が向上する”とは、印象に残る良い経験(=心で満足する)を複数回繰り返すことによって、体験は記憶に残り、企業やブランドに対する良いイメージが固定化し、定着化すること。
そして、最終的に以下の因果関係が成り立つ。
「顧客経験価値の向上」→「心で満足する顧客の増加」→「推奨者の増加(NPSの向上)」→「企業の安定的な収益の確保」
これで、「顧客経験価値」という、重要そうではあるが、その定義は何で、どのような因果関係で企業の収益に貢献できるかが整理できる。
■顧客経験価値の定義上の注意
この顧客経験価値の定義の理解は、どちらかというとハードベンダーには分かり易い。たとえばランニングシューズを製造販売している企業が、今まではシューズというハードの「交換価値」だけの焦点に対して、購入プロセスや使用する場面での使用場面に対して様々なサービスや対応を提供して、価格や機能といった「頭で満足」するのではない「心で満足する」推奨者を増やしていく、というのはしっくりと理解できる。
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