顧客ロイヤルティの、「ロイヤルティ」って一体何を意味するのでしょう。世界最大のオーガニック/自然食スーパー、ホール・フーズ・マーケットの逸話に思うこと。
顧客ロイヤルティ、従業員ロイヤルティ・・・。ビジネスをしている人なら誰でも一度は耳にしたことのある言葉だと思います。
ロイヤルティを英語の辞書でひくと、次のような定義が出てきます(以下は私が日本語に訳したものです)。
ロイヤルティ:特定の人、国、団体、あるいは目的に対して忠実であること。熱愛すること。
この定義を基に考えると、ロイヤルティとは心や感情の問題であることがわかります。しかし、これがビジネスの世界に持ち込まれてしまうと、いつの間にかお金の問題になってしまうのです。
例えば、ロイヤルティ・プログラムと呼ばれるものがあります。日本では「ポイント・プログラム」でしょうか。メンバーズ・カードなど、顧客の購入を記録し、追跡する仕組みがあって、購入する額や頻度にしたがって「ポイント」が貯まっていきます。そして、その「ポイント」をプレゼントや値引・割引などある種の特典と引き換え可能にすることによって、顧客のロイヤルティに報いるというコンセプトです。
ビジネスの世界では成果が数値化でき、測定できなければいけませんから、ロイヤルティを測る指標として購買額や頻度などが用いられるのはうなづけます。しかし、ビジネスを運営する側(つまり企業)のマインドセットとして、「購入=ロイヤルティ」と信じこんでしまうと、顧客を誤解し、顧客との間に行き違いをつくることになるのではないかと思うのです。
ザッポスのような会社を研究していくうちに、私は「ロイヤルティ」という言葉について、まったく異なるイメージを抱くようになりました。人が「ロイヤルである」ということは、私は、「特定の人や、国や団体、あるいは目的に対して熱烈な愛情を抱くがうえに、その人(国、企業、目的)のためなら一肌脱いでしまう」ということだと思うのです。
アメリカに、ホール・フーズ・マーケットという会社があり、オーガニック/自然食品にフォーカスをおいたスーパーとしては世界最大のものですが、その商品構成や店舗づくりの先進性ばかりではなく、利益最大化ではなく、社会価値の最大化を最優先とする経営の実践で大変尊敬されている会社です。同社の創設者であり、現在も最高経営責任者を務めているジョン・マッキーの新著を読んでいますが、その中で、ロイヤルティの真に意味するところを具現化した逸話があり、はっとさせられました。
テキサス州オースティンでホール・フーズ・マーケットが設立されて一年めのこと、歴史に残る大洪水が町を襲いました。13人の尊い人命が失われ、オースティン市全体の被害総額は3,500万ドルにも上りました(現在の価値に換算すると約1億ドル)。
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成功要因
2013.02.01
2012.02.02
2020.02.17
ダイナ・サーチ、インク 代表
ダイナ・サーチ、インク代表 https://www.dyna-search.com/jp/ 一般社団法人コア・バリュー経営協会理事 https://www.corevalue.or.jp/ 南カリフォルニア大学オペレーション・リサーチ学科修士課程修了。米国企業で経験を積んだのち、1982年に日米間のビジネス・コンサルティング会社、ダイナ・サーチ(Dyna-Search, Inc.)をカリフォルニア州ロサンゼルスに設立。米優良企業の研究を通し、日本企業の革新を支援してきた。アメリカのネット通販会社ザッポスや、規模ではなく偉大さを追求する中小企業群スモール・ジャイアンツなどの研究を踏まえ、生活者主体の時代に対応する経営革新手法として「コア・バリュー経営」を提唱。2009年以来、社員も顧客もハッピーで、生産性の高い会社を目指す志の高い経営者を対象に、コンサルティング・執筆・講演・リーダーシップ教育活動を精力的に行っている。主な著書に、『コア・バリュー・リーダーシップ』(PHPエディターズ・グループ)、『アメリカで「小さいのに偉大だ!」といわれる企業のシンプルで強い戦略』(PHP研究所)、『ザッポスの奇跡 改訂版 ~アマゾンが屈した史上最強の新経営戦略~』(廣済堂出版)、『未来企業は共に夢を見る ―コア・バリュー経営―』(東京図書出版)などがある。