いつの間にやら定着した「上から目線」という言葉。たいていは言われた方が黙ってしまう、会話破壊に使える言葉です。言われた方は何かしゃくにさわりませんか?特におっさんがワコード(若人)に言われた時に何て言い返せば良いの、とおやじ友人に聞かれました。
私もとても不快に感じる「上から目線」。言われてうれしいのはマリコ様くらいで、それ以外の場面ではすごく頭の悪い表現なんですが、あまりに獏とし過ぎていて反論も難しい言葉だと思います。
数年前、NHKで「就職難をぶっとばせ」という番組がありました。そこに参加していたある中小企業の社長さんが「社会ってのは、仕事ってのはやり甲斐とかだけじゃないんだよ」みたいな発言をしていました。実に味のある、私は説得力ある言葉だなと思っていると、やはり参加者の一人・就活中だという学生が「なんでそんな上から目線なんスか」「上から目線で話さないで」と一言で否定していました。
年長者や目上の人、人生の先輩に対する敬意なんてのは、もはや昭和の遺物なんでしょうかね。
私が生まれ育った東京の下町では、何だか正体のわからないおっさんが町には必ずいて、私ら下町の子供たちは訳もわからず説教されたりしてました。中には全身総彫りの白髪頭のおじいちゃんなんかもフツーに銭湯に来ていて、何となくそんな大人との付き合いを、子供ながらに学び取った気がします。
ふぁっしょんで強くなりたくてたとぉー入れましたぁみたいな元モデルさんとはだいぶ根性違うんだろうという迫力ある倶利伽羅紋々でした。
中小企業何て目の内に入らない就活生さんにとって、中小企業の社長なんて何も学ぶものは無い、単なるうっとおしいおっさんなのかも知れません。
でも仕事の話、キャリアの話って、どんな人生を送った人のものでも何か参考になるものではないでしょうか。たとえ人生に失敗した人の話でも、私がアルバイトしていた歌舞伎町の裏の裏の世界でも、今にして思えば明らかにアル中と推定できるランドリーのおっさんが、いつも訳あり風のおばさんと黙々と、深夜に洗濯物の山と格闘している姿に、悲惨とか哀れ以外の、何かポジティブな生命力のようなものを感じたのを覚えています。
そうなりたい、とは思わなかったけれど、いろんな人生があるんだなと一番学べたのは歌舞伎町でした。
「上から目線」は、こうした人生経験や年輪といったものを全否定する言葉なので、反論もしづらいのは当然です。要は「中身のない批判」なのです。
これで会話をぶっ壊せば、言った者勝ちで会話は終了しますが、やはり気持ちの良いものではありません。何より論理が通っていないのにそいつの希望通りの流れになるのも確かにしゃくにさわります。
そんな時、「『上から目線』ってどういう意味?」と説明させてはどうでしょう?「何が、どこが、なぜ『上から目線』なの?どういう意味で言ってるの?」と。ワコードは「説明」が苦手です。昭和の子供と違って言い訳して怒る親や教師から逃げまわる必要のない世代です。「どうやったら親を欺けるか」を日々考えて生きてきた子供にかなう訳がないのです。だから「なぜ?」と聞かれるのが大の苦手です。まして全然中身のない「上から目線」。説明なんて出来ないでしょう。
おっさんは言い訳上手ですよね。奥さんに、会社の上役に、お客に、常に言い訳人生で過ごしてきた私です。さあ言い訳人生を人生に生かしましょう!
コミュニケーション大学院講座
2013.10.27
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株式会社RMロンドンパートナーズ 東北大学特任教授/人事コンサルタント
芸能人から政治家まで、話題の謝罪会見のたびにテレビや新聞で、謝罪の専門家と呼ばれコメントしていますが、実はコミュニケーション専門家であり、人と組織の課題に取組むコンサルタントで大学教授です。 謝罪に限らず、企業や団体組織のあらゆる危機管理や危機対応コミュニケーションについて語っていきます。特に最近はハラスメント研修や講演で、民間企業だけでなく巨大官公庁などまで、幅広く呼ばれています。 大学や企業でコミュニケーション、キャリアに関する講演や個人カウンセリングも行っています。