交渉ではついつい自分の目的達成ばかりに気を取られ、相手がなぜこちらが望んでいるものを出せないのかまで気が回らないことが多々ある。今回は、相手のオペレーションに踏み込んで理解することで、交渉を優位に進められるということを、筆者の個人的ケースでご紹介する。
これらのことを鑑みると、最安値の価格帯の場合、一度、海外工場で決められたパターンで縫製し、実際にこちらで引き取った後、どうしても気になるのでボタンの交換をお願いするという構図を取らないと、店側ではボタン交換に応じられないようだ。多少は時間が掛かったが、それでも、筆者にしてみれば、気に入ったスーツを廉価に手に入れることができたので、満足することができた。
予めすべてが見通せていた訳ではないが、終わって見て全体像が明らかになると、今回のやり取りでは、相手のオペレーションの制約に合わせて、こちらの要求を通していったことが、欲しいものを手に入れる鍵であったことが分かる。そして、最初の交渉の段階から相手の制約を予めこちらが理解していたら、もっとスムーズに、時には相手の社内をどう説得するかも含めて、こちらから働きかけることができたのではないかと思う。
サプライヤがこちらの要求を呑まないのは、単に価格のつり上げを狙っているのではなく、呑みたくても呑めない状況、制約が向こうにあるのかもしれない。ここで自分の要求を通すことに固執して強硬な態度に出てしまうと、相手が抱えている課題、制約を引き出す機会を逃してしまう。相手が抱える課題、制約まで踏み込んで理解していれば、こちらの条件を変えない形や影響が少ない形での提案もできるかもしれない。そうした機会を逃してしまうのは非常に残念なことだ。
交渉ではついつい自分の要求ばかり主張してしまい勝ちだ。また、成果を求めるばかり、もしくは自分が客だという立場に囚われるあまり、相手のオペレーションはこちらの問題ではない、サプライヤは要求されたものを言われた通りに出すのが仕事だと考えてしまい勝ちである。しかし、買い手の立場でちやほやされることに固執するよりも、サプライヤの立場に立つことで欲しいものを迅速に手に入れることの方が、買い手にとってはメリットがあるのではないだろうか。
中ノ森 清訓/株式会社 戦略調達 代表取締役社長
調達・購買業務に関わる代行・アウトソーシング、システム導入、コンサルティングを通じて、お客様の「最善の調達・購買」を実現することにより、調達・購買コスト、物流費用、経費削減を支援する傍ら、日本における調達・購買業務とそのマネジメントの確立に向け、それらの理論化、体系化を行なっている。
コーポレートサイト: http://www.samuraisourcing.com/
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株式会社 戦略調達 代表取締役社長
コスト削減・経費削減のヒントを提供する「週刊 戦略調達」、環境負荷を低減する商品・サービスの開発事例や、それを支えるサプライヤなどを紹介する「環境調達.com」を中心に、開発・調達・購買業務とそのマネジメントのあり方について情報提供していきます