男の下半身系市場は、顧客単価が高く利益率も良いため、智慧が集まる。さらに、そのレスポンスはダイレクトであるためPDCAが早くまわる。マーケティングに携わる者は、この市場の動向から学ぶべきことがたくさんある。
男性なら一度は見たことがあるであろう「×××長茎術」の広告。誰が、こんな手術を受けるのであろうかと思いながらも、男性誌やスポーツ新聞には必ず数社のクリニックの広告が掲載されている。間違いなく患者さんは居る。市場は、あるのだ。
そもそも男の×××は、靭帯により恥骨に固定されている。その靭帯を緩め下腹部に埋もれている部分を引き出すと、平常時だけで、2~4cmくらい×××が長くなるらしい。この手術費用の相場は大体100万円ぐらい。手術結果が目に見えてわかりやすいので、その手の施術の中でも人気が高いものらしい。
マーケティング屋にとっての目から鱗の発見は、その患者さんの層にある。×××の大きさに悩む若い男性や見栄を張りたい現役バリバリの遊び人とか、当然、そういう種類の男性も、患者さんではあるのはあるのだが・・・
実は、60歳代以上の男性患者様が、多いというのだ。
そんな見栄を張ってまで女性と遊ぶ年でもない。いまさらと誰もが思う・・・そういう年配の男性が、この手のクリニックには集まってくるらしい。なせ、高齢の彼らは、「×××長茎術」を受けるのか?
その理由を知ると、男性として、人間として、身につまされる。
いま以上に年をとって→入院をして→下半身のお世話を他人にして貰うようになった時に、少しだけでも見栄を張りたい。寝たきりになったときでも、×××は、立派だなと言ってほしい・・・。こういう介護想定ニーズによる来院が、想像以上に多いというのだ。団塊世代は、散り際にも、逞しい市場を創造している。
この長茎術は「平常時の長さのみ」を大きくするためのものなので、男として必要に迫られたときの長さはほとんど変わらないらしい。だから・・・ほんと、見栄だけの効果なのである。こんなくだらないけどステキな効果を求めて、男は、ポンと100万円を用意する動物なのである。
医学的には、×××の包皮に覆われている部分を改善する効果もあるため、介護時の衛生的メリットも大きいらしい。こういう高齢者の方のために「シルバー割引制度」を設けているクリニックもある。用意周到である。現場は、いつも進んでいる。
「死ぬ準備」のために、「×××を大きく」しておく。
「死ぬ」ことを想定したときに、男として生きてきたシンボルにメスを入れる決意をする。
あまりに人間らしい市場である。
人間は、経済合理のみで生きてはいない。非合理で、不条理な選択をしてしまう根本的理由は、人間は、「死」を意識することができる動物であるから・・・。今日以上の明日を創造することができる人間の力の源泉は、そこにある。
数万人の「死」を目の当たりにした東日本大震災の体験を通じて、消費性向は大きく変わる予感がある。その動きをキャッチアップできるるステキなマーケッターになるために、ぜひ、こういう下半身系市場の発見に、心震わせて欲しい。「死」や「風俗」を遠目で眺めているマーケッターは、今から、さらに使い物にならなくなる。
私的マーケティング論
2014.01.07
2013.03.16
2011.12.27
2011.05.04
2011.04.19
2011.03.26
2011.03.13
2011.01.29
2010.11.02
有限会社ペーパーカンパニー 株式会社キナックスホールディングス 代表取締役
昭和30年代後半、近江商人発祥の地で産まれる。立命館大学経済学部を卒業後、大手プロダクションへ入社。1994年に、企画会社ペーパーカンパニーを設立する。その後、年間150本近い企画書を夜な夜な書く生活を続けるうちに覚醒。たくさんの広告代理店やたくさんの企業の皆様と酔狂な関係を築き、皆様のお陰を持ちまして、現在に至る。そんな「全身企画屋」である。