多頻度小口配送ばかりが能ではない - デイリーヤマザキ

画像: Yuya Tamai

2011.03.10

経営・マネジメント

多頻度小口配送ばかりが能ではない - デイリーヤマザキ

中ノ森 清訓
株式会社 戦略調達 代表取締役社長

デイリーヤマザキが物流改善による業務効率の向上を図っている。物流改善と言うと、もうウチでもやっているよという方もおられるかもしれないが、この取り組みの新しい所は、コンビニのこれまでの成長を支えてきた多頻度小口配送とは反対に、配送頻度を減らし、車両の積載効率、配送効率、店舗での受入業務効率を上げようというものだ。

その方法とは、1台で常温、チルド、フローズンの異なる三温度帯をまとめて配送できる配送車を用意し、従来、1日3回配送していた回数を、朝と夜の2回に削減するというもの。

配送が2回になることで、より長いリードタイムを確保でき、より積載率を向上できる。また、店舗側の受け入れ作業も1回分減らすことができる。配送リードタイムを長くできることは、配送距離を長くできることでもある。デイリーヤマザキによると、より長い配送距離での対応が可能になることから、30数か所あった物流拠点を10数か所まで集約することができたとのことである。

温度帯別の物流は、衛生、品質鮮度管理の観点から食品の物流には欠かせないが、常温は普通車、チルドならびにフローズンは低温車と別々の車両で異なる温度帯を管理しなければならなかったこれまでは、それだけで複数の車両をそれぞれの拠点から異なるルートで走らせる必要があった。

三温度帯配送車の導入により、これまで別々に走らせていた普通車と低温車を一つにまとめられ、一つのコースで走らせられる。これだけでかなりの車両走行距離が削減される。同社もこの取り組みにより、配送車両台数を減少させた。

コンビニエンスストアでは、保管スペースもなく狭い店舗で数千もの商品を扱うため、売れるたびに商品を補充する多頻度小口配送でそれを可能にしてきた。サプライチェーンマネジメント(SCM)の観点からは、在庫を持たず、売れる度に商品を補充するのは理想とされる。しかし、2-3個の商品を補充するために、その度にトラックを走らせるのでは、非常に効率が悪い。SCMを実現するためのオペレーションのコストが、その効果を上回ってしまう。

確かに、商品を売った後に、それを届けることができれば、売れ残しや機会損失もなく理想ではある。しかし、目の前に現物がないとなかなか商品が売れないことや物理的制約があるため、今の所、その理想の実現は難しい。

経営、マネジメントで大切なのは理想と現実の折り合いをつけることだ。コストや手間をかけてより良い姿を実現するのは当たり前といえば当たり前。良い意味で、いかにコストや手間を掛けずに、ある意味、楽をして理想の姿を実現するかを追求することが、より大きな改善効果を生む。

中ノ森 清訓/株式会社 戦略調達 代表取締役社長

調達・購買業務に関わる代行・アウトソーシング、システム導入、コンサルティングを通じて、お客様の「最善の調達・購買」を実現することにより、調達・購買コスト、物流費用、経費削減を支援する傍ら、日本における調達・購買業務とそのマネジメントの確立に向け、それらの理論化、体系化を行なっている。
コーポレートサイト: http://www.samuraisourcing.com/

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中ノ森 清訓

株式会社 戦略調達 代表取締役社長

コスト削減・経費削減のヒントを提供する「週刊 戦略調達」、環境負荷を低減する商品・サービスの開発事例や、それを支えるサプライヤなどを紹介する「環境調達.com」を中心に、開発・調達・購買業務とそのマネジメントのあり方について情報提供していきます

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