M&Aは入り口に過ぎない。新日鉄と住友金属とが合併へ

2011.02.17

経営・マネジメント

M&Aは入り口に過ぎない。新日鉄と住友金属とが合併へ

中ノ森 清訓
株式会社 戦略調達 代表取締役社長

新日本製鉄と住友金属工業とが合併検討を発表した。華々しく見える合併やM&Aだが、言われているほど規模の拡大で経営は安定し、調達・購買コストは下がるのだろうか?今回は、この両社の合併をケースに、M&Aのメリットやその一つとして喧伝されている規模の拡大による調達・購買コストの低減について考えよう。

実は、合併・M&A後の調達・購買オペレーションの統合は、一つの会社で行う集中購買導入のプロセスと同じだが、規模や調整しなければならない利害関係者が倍になる分、二倍、いやむしろ乗数倍の四倍程の難しさだろう。つまり、一社内で集中購買や調達・購買業務のマネジメントが十分にできていない企業が、M&Aによるシナジーで調達・購買コストの低減効果を得るというのは至難の業だ。

M&Aは、買収・統合比率の算定や人心および文化の融合など、二つの会社を一つにするだけの作業で膨大なエネルギーを費やさざるを得ない。恐らく、それに携わる当事者は、その費やしたエネルギーの大きさ故に、合併やM&Aを行えば、自ずとその戦略目標やシナジーが達成されると思ってしまうのだろうが、残念ながら合併やM&Aはその機会に着手したに過ぎない。

それでも、新日本製鉄と住友金属工業は合併すべきでないかと言うと、ここまでの両社の判断は正しいと考える。鉄鋼業はもはや国内市場だけを見ていては立ち行かず、海外市場に出て行く上でも、資源メジャーに対抗する上でも規模の拡大は必要で、かつそれをアルセロール・ミタルや中国の新興鉄鋼メーカと同様あるいはそれ以上のスピードで行っていかなければいけない。それをorganic growth(自社内部での成長)のみで行うのはスピードに欠け、合併という判断は不可避であったと考える。

この両社には、合併という果断な判断に慢心せず、また、国内外の独禁当局との調整や二つの巨大組織を合わせる作業に疲弊せず、各オペレーションの統合まで実現させ、真の合併の果実まで刈り取るまでに至って欲しい。

中ノ森 清訓/株式会社 戦略調達 代表取締役社長

調達・購買業務に関わる代行・アウトソーシング、システム導入、コンサルティングを通じて、お客様の「最善の調達・購買」を実現することにより、調達・購買コスト、物流費用、経費削減を支援する傍ら、日本における調達・購買業務とそのマネジメントの確立に向け、それらの理論化、体系化を行なっている。
コーポレートサイト: http://www.samuraisourcing.com/

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中ノ森 清訓

株式会社 戦略調達 代表取締役社長

コスト削減・経費削減のヒントを提供する「週刊 戦略調達」、環境負荷を低減する商品・サービスの開発事例や、それを支えるサプライヤなどを紹介する「環境調達.com」を中心に、開発・調達・購買業務とそのマネジメントのあり方について情報提供していきます

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