米『TIME(時)』の人は、マーク・ザッカーバーグ

2010.12.17

経営・マネジメント

米『TIME(時)』の人は、マーク・ザッカーバーグ

石塚 しのぶ
ダイナ・サーチ、インク 代表

米『TIME』誌が毎年恒例の「今年の人」を発表した。2010年のチョイスは、フェイスブックの若き(26歳!)創設者兼CEO、マーク・ザッカーバーグ。その選択は、ソーシャル時代の本格化を示唆するものと見た。

フェイスブックやツイッターや、あるいはアマゾンなどを見てもわかりますが、今日、生活者は、自分と同じ立場にある生活者が提供する情報やアドバイスにより大きく依存する傾向にあります。専門家や売り手が提供する商品レビューより、生活者が提供する商品レビューの方が信用できる。あるいは、コールセンターに電話したり、企業のFAQを見るより、顧客フォーラムに行った方がより詳細な情報がより速く得られる・・・などといった声がよく聞かれます。

企業が提供するエクスペリエンスより、顧客同士が提供するエクスペリエンスの方が優れている、といったことが多々あるのです。企業は、このような顧客パワーを認識するべきですし、それに応える仕組みをつくることに注力すべきだと思います。

そして、企業の「あり方」としては、顧客についてより深く知る姿勢が求められていると思います。それも、常に顧客の声を聞いている姿勢が求められているということです。何か特別な「イベント」として顧客の声を聞く場を設けるのではない。むしろ、オン/オフライン含めてあらゆる方法を駆使し、顧客の声をいつも聞き続ける体制をもつ、ということだと思います。それも、今までの倍どころか、何十倍も、ということです。

さらに、VOC(ボイス・オブ・カスタマー)といっても、ただ単に顧客の声を集計して定量化すればよいというものではない。顧客エクスペリエンスというのは、煮詰めれば「感情」。ザッポスのCEOトニー・シェイも言っているように、お客さんにとっては、「どんな気持ちにさせてくれたか」が重要なのです。だから、ただ「データをとっておしまい」ということではなくて、「お客さんの感情」に触れて、エンパシー(共感する気持ち)や姿勢を養うことが必要です。「企業人」としての自分ではなく、「生活者」としての自分に立ち返るということです。

「顧客への共感を育てる」という点では、アメリカのオフィス用品流通では最大のステープルズという会社が、かなり前から先進的な試みをやってきました。前述の著書『売れる仕組みに革命が起きる』の中に詳しく書いていますが、この会社では、ボストン郊外にある本社で、月四回程度、有志社員が大講堂に集い、コンタクトセンターに入ってくるコールを一時間ライブで傍聴する、ということをやっています。本社で働いている人間なら、所属部門や役職に関わらず誰でも参加できるのですが、これには、CEOなどトップの人間も頻繁に参加しているということです。顧客を「ナンバー(頭数とか売上)」としてではなく、「個々の人間」として扱う。顧客の声を生で聴くことによって、顧客の怒りやフラストレーション、あるいは喜びを直に経験するのだそうです。

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石塚 しのぶ

ダイナ・サーチ、インク 代表

ダイナ・サーチ、インク代表 https://www.dyna-search.com/jp/ 一般社団法人コア・バリュー経営協会理事 https://www.corevalue.or.jp/ 南カリフォルニア大学オペレーション・リサーチ学科修士課程修了。米国企業で経験を積んだのち、1982年に日米間のビジネス・コンサルティング会社、ダイナ・サーチ(Dyna-Search, Inc.)をカリフォルニア州ロサンゼルスに設立。米優良企業の研究を通し、日本企業の革新を支援してきた。アメリカのネット通販会社ザッポスや、規模ではなく偉大さを追求する中小企業群スモール・ジャイアンツなどの研究を踏まえ、生活者主体の時代に対応する経営革新手法として「コア・バリュー経営」を提唱。2009年以来、社員も顧客もハッピーで、生産性の高い会社を目指す志の高い経営者を対象に、コンサルティング・執筆・講演・リーダーシップ教育活動を精力的に行っている。主な著書に、『コア・バリュー・リーダーシップ』(PHPエディターズ・グループ)、『アメリカで「小さいのに偉大だ!」といわれる企業のシンプルで強い戦略』(PHP研究所)、『ザッポスの奇跡 改訂版 ~アマゾンが屈した史上最強の新経営戦略~』(廣済堂出版)、『未来企業は共に夢を見る ―コア・バリュー経営―』(東京図書出版)などがある。

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