事業会社の苦労を知らないエリート達の手で、経済、サプライチェーンを非効率化、非活性化、イノベーションを阻害するような規格の検討が地球環境保護の美名の下、水面下で進んでいる。 小さいながらも事業を営む人間の一人として、そんなまやかし、愚行にはNoと言わざるを得ない。
それでも、納入品による客先での品質トラブルを恐れる営業、製造、調達、設計、品質管理のどの現場でも、「お客様が変更を許してくれません」と述べることが何もしないことの免罪符となる。何もしなければ、マネジメントの必要もない。粛々と日々のオペレーションを繰り返せばよい。しかし、その先に待っているのは、衰退だけ。
カーボンフットプリントはこうした動きを加速させる。ある部品を変えることによって、カーボンフットプリントがどう変わるのか、改善を行うとするものは、そこで用いられるすべての材料にまで遡ってそれを試算し直さなければならない。検討の過程では、様々な候補を挙げなければ、良い案が生まれない。それらについて、すべて同じ作業を繰り返さなければならない。そこまでして、何かを変えようというインセンティブを現場の人間は保てるだろうか。
もう一つの懸念は、中小企業、ベンチャーにとっての事業継続のハードルがますます高くなるということだ。改善うんぬんの前に、単に何かを売ろうとするだけで、こうした計測、認証コストの負担に耐えられなければならない。ただでさえ、どこの業界でもメジャー化、スケールの追及が進む中で、中小企業の存続や新規参入が起こりにくくなる。競争や新規参入がなければ、工夫しようというインセンティブが生じず、イノベーションは起こらない。
国際規格を議論するような優秀な人達は、自分達の能力が高く、様々なことを実行に移せるだけのパワー、資金力を持っているだけに、こうした持たないものの苦労など微塵も分からない。しかし、中小やベンチャーも含めた猥雑さがないと、ビジネス、経済は活性化せず、経済が衰退すれば、環境以外の所で別の問題が出る。
では、我われ企業人はこうした動きに対して、ビジネス、現場を知らない者によるナンセンスな議論と無視していれば良いのだろうか。決して、そんなことはない。そうした態度でいると、こうしたナンセンスなことがまかり通る世の中になっている。スコープ1、スコープ2、内部統制などの例を忘れた訳ではあるまい。
分からない人間には、分かってもらうよう説明していくしかない。残念ながら、現在、規格・規制を作る側の人間は、それを実行に移してしまうだけのパワーがある。
ただ、自分の視野ばかりに閉じこもっており、もう少し広い視点、長期的な視点に欠けている。これは自分達に痛みが伴わないのだから仕方がない。彼/彼女らに対抗するには、その懐に飛び込むしかない。こうした規格・規制の場に参加し、いかにスコープ3、カーボンフットプリントをすべての製品・サービス、活動に適用するのが非現実、ナンセンス、人々の生活に悪影響を与えるかを訴えていくしかない。
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株式会社 戦略調達 代表取締役社長
コスト削減・経費削減のヒントを提供する「週刊 戦略調達」、環境負荷を低減する商品・サービスの開発事例や、それを支えるサプライヤなどを紹介する「環境調達.com」を中心に、開発・調達・購買業務とそのマネジメントのあり方について情報提供していきます