7月28日に茨城空港に就航した中国・上海の「春秋航空」が就航した。「茨城-上海間の運賃4000円」という航空運賃を発表し話題を呼んだが、来日した社長が発表を撤回しメディア各紙誌で取り上げられ、さらに話題を呼んでいる。現在の運賃は大手航空会社より1万円以上安いとはいえ、3万円台。今後、破格の価格が実現されることはあるのだろうか。そして、同社は日本市場で成功することができるのだろうか。
ひとことで言えば、春秋航空の成功はLCCの先輩である米国・サウスウェスト航空や、アイルランドのライアンエアーのバリューチェーンを自社に取り入れ、実現してきたことがカギである。では、同社が日本でも営業成績を伸ばし、さらなる高効率モデルを実現して「定期便就航」「4000円チケット」を実現するためには何が必要なのだろうか。
格安航空会社・LCCは別名、「No Frills Airline」ともいう。つまり、frill=飾り、余分なもの、装飾的なものを排除した航空会社であるということだ。同社はバリューチェーン上で高効率化や機内販売などで収益を上げ、低価格による収益不足を補う仕組みを持っている。しかし、それは顧客から明示的に見える部分ではない。顧客からは「簡素化」だけが際立って見える。さらに、遅延リスクやキャンセルや予約変更不可の条件を飲み込む必要がある。
正直なところ、ビジネス使用にはかなり厳しいのではないだろうか。だとすれば、同社の成功にはビジネス客ではない旅行客、しかも、旅という「ハレの日」においても、飛行機の使用は「単なる移動手段」と割り切る客層を確保することが欠かせない。
同社の不利な点は、日本において本格的なLCCがまだ馴染みがないことだ。国内の進行航空会社もサービスの簡素化を図っているところもあるが、LCCのNo Frillsぶりは比ではない。故に、同社の課題は日本のユーザーにLCCとはなんたるかと、その収益構造の合理性を啓蒙し、顧客層を開拓することが欠かせないのである。
メディアによれば、同社社長が4000円撤回について、定期便が認可後に座席の10%を片道4000円、それ以外に8000円、1万6000円、2万円と需要と時期で変動させるとコメントしている。前述の合理性が実現された成果として、明示的に4000円チケットは販売されるであろう。さらに、その料金の透明性もアピールする必要がある。
春秋航空は4000円チケットをどのように用いるのか。そして、LCC市場を日本に根付かせることができるのか。その意味からしても、同社の動向と価格設定からは目が離せないといえるだろう。
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2009.02.10
2015.01.26
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。