今日ご紹介するのは以下の本。 『顧客が部族化する時代のブランディング』 (原田保、片岡裕司著、芙蓉書房出版)
個人的な見解ですが、近年、「ブランドとはコミュニティである」という考え方が、主流になりつつあるように思われます。
これは、端的に言えば、製品やサービスを支えてくれている「顧客の集合体」=「顧客コミュニティ」との関係づくりこそが、「ブランド構築(ブランディング)」であるというものです。
mixi、gree、facebookといったSNSや、ツイッターなどでお互いにつながりあい、様々な情報を共有しあうことが簡単になったおかげで、消費者たちが、ブランドイメージやブランド評価の形成に大きな力を持つようになってきた今日、ブランドづくりの主役は「消費者」に移っています。
従来のように、企業側がマーコム(マーケティングコミュニケーション)を通じて狙い通りのブランドづくりを行うのは不可能です。したがって、顧客コミュニティとの良好な関係づくりに注力するしかない、のだとも言えるでしょうね。
本書もまた、「ブランドとはコミュニティである」という考え方を基軸にして、社会学において研究されてきた「都市部族(トライブ)」という概念、枠組みを元に、ブランドコミュニティづくりの4つのパターンを読み解く内容となっています。
なお、「都市部族」とは、都市のサブカルチャーにおける小集団を意味します。
すなわち、特定の趣味やライフスタイルに基づいて、小さな集団、共同性を形成している人々のことです。例えば、mixiやgreeの中で数多く作られ、運営されている「コミュ」(コミュニティ)もこの都市部族(ネット上の)と言えるでしょう。
さて、本書では「部族性(部族的な特徴を示すもの)」の形成に影響を与える要素を以下の3つに絞っています。
・舞台装置
・演出
・行為
すなわち、どのような舞台で、どのような行為を、どんな演出で行うかという切り口で、ブランドコミュニティのパターンを説明しているのです。
具体的には、上記3つ要素の関係性のあり方から、次の4つのパターンを提示しています。
・公共参画型
・都市没入型
・感覚共鳴型
・経験共同型
それぞれのパターンがどのようなものかについての理論的な説明はかなり複雑であるため、本書を読んでいただくとして、各パターンに該当するブランドにはどんなものがあるのか、以下に示しておきます。
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・公共参画型
-ザ・ボディショップ
-パタゴニア
・都市没入型
-ハーレー・ダビットソン・ジャパン
-アップル
・感覚共鳴型
-IKEA
-オバマ政権
・経験共同型
-アマゾン
-金沢21世紀美術館
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それぞれのパターンに分類されたブランドをみるだけで、各パターンがどんな部族性を持つかがおおよそ推測できるかと思います。
前述したように、部族性の説明はやや複雑であり、理解するのが大変ではあるのですが、ユニークな視点でブランドを読み解いた本書も、ぜひ一読をオススメします。
ブランド本百選
有限会社シャープマインド マーケティング・プロデューサー
これからは、顧客心理の的確な分析・解釈がビジネス成功の鍵を握る。 こう考えて、心理学とマーケティングの融合を目指す「マインドリーディング」を提唱しています。