今日ご紹介するのは以下の本。 『ほんもの』 (J.H.ギルモア、B.J.パイン著、林正翻訳、東洋経済新報社)
近々、紹介したいと思っている良書、『marketing 3.0』(Philip Kotler他著、未翻訳)では、消費者はますます企業を信頼しなくなっており、一方で、オンラインネットワークで相互につながりあい、情報を簡単に共有できるようになった他の消費者をますます信頼するようになってきていると主張しています。
この背景には、顧客第一主義を唱えながらも、現実には、売上・利益拡大を重視しすぎたために、たいして特徴のない製品、低品質の製品をオオゲサに吹聴し、いわば騙すようにして売る企業が多かったことがあります。
ですから、『ほんもの』では、次のように直截な言葉が冒頭に出てくるのでしょう。
「消費者は、企業が提供するものについて、ますますほんものであるかどうかを重視するようになった。正直な人からほんものを買うことを望んでおり、いかさま師からにせものを買うことが望んでいない」
さて、本書の狙いは、「消費者が持つほんもの、あるいはにせものの感覚を、企業がいかにうまくマネジメントできるか」という点を説明することにあります。
では、消費者が製品やサービスを「ほんもの」とみなす場合のキーワードは何だかわかりますか?それらは、一貫性、正直、誠実、透明性、信頼といったものです。
実は、こうしたキーワードは、「優れたブランドづくり」においても必須のキーワードです。『ほんもの』をブランド関連本のひとつとして紹介する理由がここにあります。もっと言えば、本書は、これからのブランディングにおいて最も重要なコンセプトを提示していると、私は考えています。
本書では「消費者の感性の変遷」、具体的には、どのような基準でモノを買うのかについての変化を以下の4段階で説明しています。
1.入手可能性→確実な供給にもとづく購入
2.コスト→手ごろな価格で入手できることにもとづく購入
3.品質→製品の卓越した性能にもとづく購入
4.ほんもの→自分像に合致することにもとづく購入
この4段階をざっくり言うと、最初はとにかく手に入りさえすれば、どんな製品でも良かった。そのうち、多種多様な製品があふれ、競争が激しくなってくると、より安いものが選ばれるようになった。さらに成熟してくると、安かろう悪かろうではなく、優れた品質を持つ製品が選ばれることが増えてくる。最後の段階では、価格、品質ではなく、自分の理想とする生き方、価値観にぴったりの製品であるかどうかが、購買意思決定における重要な判断基準になってきたというわけです。
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ブランド本百選
有限会社シャープマインド マーケティング・プロデューサー
これからは、顧客心理の的確な分析・解釈がビジネス成功の鍵を握る。 こう考えて、心理学とマーケティングの融合を目指す「マインドリーディング」を提唱しています。