ビジネスは、「七転び八起き」。「転んでもタダでは起きない」たくましさと機転が必要になります。そして、リーダーの資質は、「大変な時にこそ、本質を見極める」ことができるか否かで問われるのでは・・・。
もし、「ビジネス青春小説」という書籍カテゴリーがあったら、『Delivering Happiness』はそのジャンルに属するのではないか、と私は思っているのですが、トニー・シェイが語るザッポスの十年間は文字通り波乱万丈で、数々のアドベンチャーに満ちています。
そして、その中にも、笑いがあり、苦悩があり、喜びがあり、エキサイトメントがあり、学びがある。起業家や経営者には是非読んでいただきたい一冊だと思います。
先日書いたザッポス倒産の危機と、トニーのキリマンジャロ登山中のエピソードとちょうど同じ時期に、ケンタッキーに倉庫をオープンしたいきさつが語られています。2002年のことです。
当時、ザッポスは、サンフランシスコから車で二時間半ほど北に走ったところにあるウィローズという町に倉庫を構えていました。ある時、Eロジスティクスという会社が、倉庫業務の代行サービスの話をザッポスに持ちかけます。彼らに仕事を任せて、ケンタッキーにある倉庫から配送ができるようにしませんかというのです。
ご存知のように、アメリカは広大な国です。サンフランシスコ(西)からニューヨーク(東)まで、およそ3,000マイルの距離があります。これは、東京からバンコクまでの距離に匹敵します。ですから、西海岸のお客様の場合はいいですが、東海岸のお客様に配達する場合には、実に長い時間がかかっていた。
それに対して、アメリカのほぼ真ん中にあるケンタッキーから配送すれば、アメリカの人口の70%に、普通輸送でも2日間でリーチすることができる。おまけに、ケンタッキーにはUPSの空輸ハブもある、ということで、ザッポスでは、Eロジスティクスに倉庫業務を委託することにしたのです。
でも、全在庫をカリフォルニアからケンタッキーに「お引越し」するというのは、並大抵のことではありません。サイトの運営をストップするなんてもっての他だし、かといって、せっかく商品を買ってくれたお客様に迷惑をかけるわけにはいかない。・・・ということで、ザッポスではほぼ全社員を動員して金曜日の夕方までに全在庫をトラックに積んで、土、日をかけてケンタッキーまで輸送して、月曜の終わりまでに在庫を倉庫に格納して、火曜日から平常どおり配送作業を開始する、という大掛かりなプランを立てたんです。
その時、手持ちの在庫はなんと4万足の靴。それらすべてを大型トラック5台に詰め込み、予定通り金曜日の午後5時には、最後のトラックを送り出すことができました。
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ダイナ・サーチ、インク 代表
ダイナ・サーチ、インク代表 https://www.dyna-search.com/jp/ 一般社団法人コア・バリュー経営協会理事 https://www.corevalue.or.jp/ 南カリフォルニア大学オペレーション・リサーチ学科修士課程修了。米国企業で経験を積んだのち、1982年に日米間のビジネス・コンサルティング会社、ダイナ・サーチ(Dyna-Search, Inc.)をカリフォルニア州ロサンゼルスに設立。米優良企業の研究を通し、日本企業の革新を支援してきた。アメリカのネット通販会社ザッポスや、規模ではなく偉大さを追求する中小企業群スモール・ジャイアンツなどの研究を踏まえ、生活者主体の時代に対応する経営革新手法として「コア・バリュー経営」を提唱。2009年以来、社員も顧客もハッピーで、生産性の高い会社を目指す志の高い経営者を対象に、コンサルティング・執筆・講演・リーダーシップ教育活動を精力的に行っている。主な著書に、『コア・バリュー・リーダーシップ』(PHPエディターズ・グループ)、『アメリカで「小さいのに偉大だ!」といわれる企業のシンプルで強い戦略』(PHP研究所)、『ザッポスの奇跡 改訂版 ~アマゾンが屈した史上最強の新経営戦略~』(廣済堂出版)、『未来企業は共に夢を見る ―コア・バリュー経営―』(東京図書出版)などがある。