組織を活性化させるために、人事異動はひとつの有効な手段であることは間違いありません。仕事へのやる気を高めるために、自己申告制度などを設けてなるべくやりたい仕事をやってもらうように心を砕きますが、度が過ぎると弊害も生まれます。そのサジ加減は人事部の腕の見せ所なのです。
また、もうひとつやっかいなことは、頻繁すぎる異動は無責任体質を生んでいくという側面もあるということです。大企業で引継ぎのルールや仕組みが組織の中に長い年月をかけて完成されているというような場合は別として、多くの会社が引継ぎなどは現場任せです。
異動する時は当然仕事は途中です。
大きな課題であればあるほど、取り組みは途中で次の仕事に移っていくことになります。
頻繁な異動をしていると、課題の解決をやり抜かないうちに次に移ることが当たり前になっちゃうんですね。
前の企業グループには、とても目立つスター社員という人が何人かいたのですが、そういう人の中には、上からや外からの評判はよくても、身近な職場での評判は今一つという人もいましたね。
目立つ仕事をしている人ほど、目をかけられて次々と仕事が変わり、職場を移っていく傾向にあったわけなんですが、事業再生請負人のように言われている場合でも、かき回すだけかき回して、大騒ぎをして、その様子が上から見ると「あいつが行った職場は活性化する」と見えて評価されるわけです。
下に優秀な人がいて必死に何とかしていることはあまり評価されません。
下のものから見ると散々振り回されて、次の異動の時には何も結果を出さないまま投げ出して台風が過ぎ去ったような状態でしかない、ということがよくあります。
うまくいったことは、大騒ぎした当人の手柄で、うまくいかなかったことは残って後始末をしなくてはならない人たちのせい、というような理不尽なことが平気で起こってしまうんですよ。
頻繁な異動というのは、言葉は悪いのですが、トイレに行ってお尻を拭く習慣のない人を大量に生み出すようなものです。
じっくり仕事に取り組んで、責任を持って結果を出す、という風土を壊してしまいます。
無責任な軽い社員ばっかりになっちゃいますから、人間教育の面でも問題があります。
社員が少し飽きるくらいの期間じっくり取り組んでもらうくらいでちょうどいいのではないかと思います。
くれぐれも飽きっぽく、何事も成就できないダメ社員を量産することのないように、人事部は自社の人事異動の仕方を再確認していただきたいと思います。
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今野 誠一
株式会社マングローブ 代表取締役社長
組織変革及びその担い手となる管理職の人材開発を強みとする「組織人事コンサルティング会社」を経営。 設立以来15年、組織変革コンサルタント、ファシリテーターとしてこれまでに約600社の組織変革に携わっている。