アンケートは質問に対して本人なりの解釈で書いていることから、受け止め方が難しい。アンケートの評価が研修プログラムの評価と捉えるには注意が必要だ。
研修には、一日の最後に「アンケート」を書いてもらう習わしがある。
これは二つの目的で取るものであるが、なかなか解釈が難しい。
ひとつは、受講者の感想を生かして、今後の研修企画の参考にすること。
もうひとつは、受講者の研修への満足度や、理解や気づきのポイントや、今後への課題感などを把握すること。
何しろ、あくまでもアンケートの質問に対しての、本人なりの解釈で書いていることから、受け止め方が難しい。
受講者の満足度が、全員最高レベルであったらかといって、いい研修だったのかと言えばそれはそうとは限らない。
非常に楽しい進行で、プログラムも容易に理解できるもので、楽々と受講できた、という場合でも満足度は高いと答える場合がある。
その実態はと言えば、頭にあまり汗もかいておらず、ストレッチもかからない状態で、楽しさ優先で、成長への寄与という点では疑問が残るということもある。
逆に、大満足ではなく「やや満足」という答えが多く「どちらとも言えない」の人がいるからとガッカリしていると、こちらのほうが、受講者の成長への寄与という観点では高い場合もある。
難易度の高いプログラムに必死でくらいついていき考え抜いた経験の中で、自分自身の足りない点に気が付き、自分自身への新しい課題感が心の中に渦巻いていての「やや満足」や「どちらとも言えない」であることも多いからだ。
これを研修プログラムへの「評価」と勘違いして、安易にプログラムを易しく改善したりすると、本末転倒になってしまうのだ。
従って、アンケートを回収して集計し、そのデータでものを考えることを慎み、きちんと受講者と対話することで真の状況を理解する努力をしなければならない。
同じようなことが、リーダーの存在に対する、メンバーの受け止め方にも言える。
組織変革コンサルティングの過程で、社員インタビューをさせていただく時に、社長や幹部、あるいは管理職の「評判」に話が及ぶことが多い。
ここで、いわゆる「評判がいい」人が、経営にとっていい存在かと言えば、そうではない場合も多いのである。
社員から評判がいいという場合に、物分かりがよく、いつも優しく、衝突することもなく、「やりやすい上司」「やりやすい社長」というだけのことも少なくないからである。
BAD&NOオンリーやパワハラは困ったものであるが、長い目で「育てよう」という意識で、肝心なところで妥協しない厳しさがある人に関して、周囲の社員からの「☆☆さんは、部下に厳しすぎる」などの「評判」に惑わされてはいけない。
アンケートも管理職の評価と言ったものも、表面的な数字に惑わされず、本質を観る姿勢が重要である。
人事組織
2013.07.02
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2010.06.23
今野 誠一
株式会社マングローブ 代表取締役社長
組織変革及びその担い手となる管理職の人材開発を強みとする「組織人事コンサルティング会社」を経営。 設立以来15年、組織変革コンサルタント、ファシリテーターとしてこれまでに約600社の組織変革に携わっている。