教育の効果はひとえに「受講者本人の意思」にかかっているということである。
社員教育の一環としての職場を離れた合宿研修などについて、費用対効果に意識が向かうのは当然のことである。
費用はすぐにわかるが「効果」はすぐにはわからない。
研修の場合の効果は、受講者の意識変革であり、成長(社員として人間として)であり、業績の向上という結果であろう。
効果測定は、なかなか難しい問題であるが、研修ご担当者としては、何とかして効果を最大にしようと、フォロー研修などにも力を入れることになる。
しかしながら、このような努力もなかなか報われない。
結局のところ、どんなに面白い研修プログラムを作っても、どんなに絶妙なファシリテートをしても、本人が何かを得ようと心と頭を開いて取り組むつもりがなければどうにもならない。
そして、その後の取り組みについても、どのようにフォローしようと、会社がお金をつぎ込もうとも、本人が糠に釘状態で「目の前のことをしていればいい」という態度を変えるつもりがないのであれば、何も変わらない。
教育の効果はひとえに「受講者本人の意思」にかかっているということである。
受講者本人の生き方まで踏み込んで、一生懸命会社が必死になって笛を吹く必要がどこまであるのかは、はなはだ難しい。
フォロー研修で、受講者の話を聞くと、数か月前の合宿研修本体でやったことは、驚くほどの確率と割合で「忘れている」し、そこからの新しい取り組みも「何も起こっていない」。
自分自身を「変えて」いき、さらには自分が言いだしっぺになったり、起点となって「会社を変えていこう」「チームを変えていこう」と考える人は驚くほど少ない。
フォロー研修などでの最後の決意表明で多いのは、「前回の研修でやったことはほとんど忘れていたが、今回こそは少しずつでも着実に取り組んでいきたい」というものであるが、そのようなスピーチをする人で取り組む人はまずいない。
まずもって、「自分の将来の可能性を広げよう」という意志の無いところには何も生まれないということなのである。
駆け出しの頃は、研修ファシリテーターの仕事の現場で、受講者とやり合うようなこともしていた。
そうした、「自分の将来の可能性を広げよう」としない態度が許せなかったからだ。
今は、そんな馬鹿なことはしない。
自分の将来の可能性を自分で狭めようとすることは、本人の自由であり、僕がとやかく言うことではないからだ。
そして、会社としても最初から全員が自覚を持って変わってくれると期待はしていないものなのである。
受講者の中の一握りでも意識変革、行動変容が起こり、組織を変えてくれる人材が現れてくれることを期待する。
会社としては、本当にやる気のある人にもっともっと手厚くしてもいいんじゃないかと思う。
そして、自ら将来の可能性を狭めようとしているとしか思えない人には冷たくすべきである。
一律教育の時代は終わっていくような気がしてならない。
株式会社マングローブ 今野誠一
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今野 誠一
株式会社マングローブ 代表取締役社長
組織変革及びその担い手となる管理職の人材開発を強みとする「組織人事コンサルティング会社」を経営。 設立以来15年、組織変革コンサルタント、ファシリテーターとしてこれまでに約600社の組織変革に携わっている。