これまで三回続けました事業仕分けから支出管理の典型的な手法をご紹介する「事業仕分けを仕分けする」、今回で最終回です。
ただ、予算の策定段階では、どのような方法、仕様で、誰が、どんな会社を使ってということが検討されておらず、これらの方法でも、予算執行における細かいマネジメント、チェックは働きません。予算の執行の過程で、これらの詳細が詰められ、方法や仕様、取引先などが決められていきます。事業仕分けで見てきたように、事業におけるムダは、目的そのものの誤りを除けば、方法のムダ、過剰仕様、取引先の選定・管理方法など、この過程で多く生まれます。つまり、ムダをなくしていくには、予算の策定段階における管理では不十分で、予算の使途を明確化し、執行していく過程でムダを削ぎ落とすマネジメント、チェック機能が組織には不可欠なのです。
契約書を交わすまで、発注書を発行するまでならば、無数のオプションが事業主体、買い手企業にはあります。仕様に潜むムダがあれば、幾らでも削ることが可能です。もっとふさわしい取引先が見つかれば、簡単に切り替えることができます。ところが、一度、契約書、発注書を交わしてしまうと、コストは確定し、それを変えるには、手配した材料や部品、設備への投資など相手にも損害が発生し、一気に難しくなります。
調達・購買の手法の一つに開発購買と呼ばれるものがあります。これは、調達→設計→開発→企画と事業・製品・サービス開発プロセスの川上になればなるほど、採用する素材・技術・仕様・サプライヤの自由度が高く、コスト低減の余地も大きいことから、将来、量産段階に入った時の購買・オペレーションコストを開発プロセスの早い段階から考えて、企画、構想を練っていくという手法です。俗に、コストの8割が設計段階までに決まっていると言われます。開発購買も、最終的な予算執行の決定をする前にムダを削ぎ落とす手法の一つです。
このように事業に潜むムダを無くす方法は幾らでもあります。大切なのは、これらの方法を、会計数字上に現われたコストを見て、もぐら叩き的なコスト削減にあわてて使うのではなく、ムダが発生してしまい、解消が困難になるもっとずっと前、予算を使う段階までにこれらの方法を実施、予めムダを削ぎ落としてしまうことです。
正直に申し上げて、なぜ日本ではこんな当たり前のことが行なわれず、ムダばかり許されるのか、良く分かりません。
小手先の対処療法ばかりで抜本的対策には逃げ腰、現場主導でマネジメント不在など幾つかの要因が考えられるのですが、そうした問題に正面から取り組まなければ、いつまでたっても問題は解決しません。
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株式会社 戦略調達 代表取締役社長
コスト削減・経費削減のヒントを提供する「週刊 戦略調達」、環境負荷を低減する商品・サービスの開発事例や、それを支えるサプライヤなどを紹介する「環境調達.com」を中心に、開発・調達・購買業務とそのマネジメントのあり方について情報提供していきます