これまで三回続けました事業仕分けから支出管理の典型的な手法をご紹介する「事業仕分けを仕分けする」、今回で最終回です。
今のもぐらたたき式のやり方では、ムダが生じてからそれを削りに行くので、少なくとも一定期間はムダが生じることになります。施設、空港、道路、ダムといったプロジェクトモノ、箱モノの場合には、ムダが生じてからでは手遅れ、時には、撤退にコストが掛かるため、引くに引けなくなり、ムダと分かっていながら、それを容認し、ムダを垂れ流し続けなければならない場合もあります。
もぐらたたき式のやり方には、前回ご紹介したとおり、組織には慣性の法則があるため、予算を一度付けてしまうと、それが既得権益となり、抵抗勢力を生むことで、見直されることがなくなってしまう恐れもあります。特に、行政のような前例踏襲型の組織では、この危険性は非常に高くなります。
地から自動的にお金を吸い上げられる、足りなくなれば簡単に借金ができる仕組みの為政者、行政の方々には分からないかもしれませんが、ムダを削るのは実は非常に簡単なことです。方法は幾らでもあります。
たとえば、決めた範囲の中で予算を組む、予算にキャップを設けることです。私共のようなベンチャー企業では、資金も潤沢にある訳ではなく、必要なマーケティングや事業開発もままなりません。だからといって、このようなベンチャーにお金を貸してくれる銀行はありませんし、ベンチャーキャピタルですら、成功しそうなではなく、成功したベンチャーにしかお金を出さない日本では、資金調達すらままなりません。このような環境では、最初から、予算には制限があるという前提の下、使える範囲の中で、必要なものであっても火急でないものは削り、お金やスタッフの時間の最大活用に知恵を絞ります。使う前に、ムダなモノなど発生させている余地はまったくないのです。財政が苦しくなると、すぐどうやって国民の負担を増やすかということを考えるのとは、根本的に考え方が異なります。
キャップ制は非常に簡単に導入できる方法ですが、これだと、必要なものも含めた一律の予算カットや、本来ならば廃止するものまで残ってしまうというデメリットがあります。
そうしたキャップ制のデメリットを補うものに、ゼロベース予算という考え方があります。ゼロベース予算は文字通り、予算策定において、過去の実績を白紙とし、その時の戦略に基づき、本当に必要なものに絞って、ゼロから予算を策定する手法です。名前は忘れてしまいましたが、GEには、セッションIIと呼ばれる中期経営計画の前に、予算どころか、ビジネスプロセス、これまでの組織、工場の存在も白紙にし、「もし、今から新規に今携わっているビジネスをやるとしたら、どのようにビジネスプロセス、サプライチェーンを構築するか」と考えさせるセッションがありました。いずれも、目的は、過去のしがらみに囚われることなく、現在ベストな方法で事業を行なうにはどうすれば良いのかを考えさせることによって、予算・組織に含まれているムダを洗い出すというところにあります。
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株式会社 戦略調達 代表取締役社長
コスト削減・経費削減のヒントを提供する「週刊 戦略調達」、環境負荷を低減する商品・サービスの開発事例や、それを支えるサプライヤなどを紹介する「環境調達.com」を中心に、開発・調達・購買業務とそのマネジメントのあり方について情報提供していきます