エコタイヤというと、燃費向上への貢献が注目されがちですが、タイヤ版野村再生工場ともいうべき、タイヤの寿命を延ばすことに着目し、環境負荷低減に取り組んでいる企業があります。 それがミシュランです。 今回は、ミシュランのタイヤ延命、再生技術から、環境経営の着想のヒントを得ていきます。
リトレッドは欧州だけでなく米国でも広く普及している方法です。
■ロングライフ
同社のタイヤは、リグルーブ用にトレッド部に十分な厚みを持たせていることもあり、ユーザの感覚では、何もしなくてもタイヤ溝が減りにくく、従来のタイヤの2倍位の寿命があるようです。
ロングライフは当然ですが、リグルーブ、リトレッドのいずれも、後付でできる方法ではありません。リグルーブは後から溝を削り直して溝を付け直す訳ですから、予めトレッドを厚くしておかなければなりませんし、リグルーブもリトレッドも、トレッド以外のタイヤケーシングをより長期間使しますから、トレッド以外の耐久性も上げておく必要があります。
タイヤはゴムを型に流し込むだけで作られるのではなく、その骨格となるカーカス、これを補強するベルト、ホイールとの接合部となるビード、接地面のトレッドなど、幾つかの部品を組み合わせて作られます。それらのパーツの中にはスチールコード、ナイロン、ポリエステル繊維などが織り込まれたり、タイヤが目指す性能に応じてゴムの配合比率が変えられたりしています。リグルーブ、リトレッド、ロングライフを実現するには、予めそれらを想定し、材料、部品の組み合わせ方、配合を考えなければなりません。
当然、これら個々のパーツに耐久性を持たせれば、初めは他社のタイヤに比べれば多少高くなります。しかし、トータルのコストで見れば、ケーシングのムダが減りますので、こちらの方がお客様のコストは低くなります。とはいえ、目の前の価格に左右されるお客様には売りにくくなってしまいますので、マーケティングや販売の方法も変わってきます。
リグルーブもリトレッドも、お客様によって異なる使用状況のタイヤを再生する技術ですので、タイヤの使用状況によっては、それらが事故の原因となりかねず、タイヤの使用状況の診断とそれにおうじたリグルーブ、リトレッドの方法を実施するかしないかも含めて適切に判断し、サービスを提供していく拠点を整備していくなどの投資も必要になります。
そうした事業リスクや複雑な技術的課題にも関らず、真にお客様に良いモノを、かつ環境負荷の低減に役立つものを提供していくには、単にタイヤを提供するのではなく、リグルーブやリトレッドのような技術により、ロングライフなタイヤを提供するというような、様々な事業機能、製品・サービスの開発の方向性を統合する「真にお客様に良いモノを、かつ環境負荷の低減に役立つものを提供していくんだ!」というその企業の設計思想が欠かせないことを、同社の取組みは示唆しています。
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株式会社 戦略調達 代表取締役社長
コスト削減・経費削減のヒントを提供する「週刊 戦略調達」、環境負荷を低減する商品・サービスの開発事例や、それを支えるサプライヤなどを紹介する「環境調達.com」を中心に、開発・調達・購買業務とそのマネジメントのあり方について情報提供していきます