既存映写機を生かして3D上映‐富士フィルム

2010.05.27

経営・マネジメント

既存映写機を生かして3D上映‐富士フィルム

中ノ森 清訓
株式会社 戦略調達 代表取締役社長

3D映画アバターのヒットや3DTVの発売など、映像コンテンツ産業では、3Dに注目が集まっています。 2009年、2010年は3D元年との声も上がっていますが、ジョーズ3Dとか13日の金曜日3Dとかかなり昔から3D映画ありました(前評判の割にはヒットしなかったと記憶していますが。) さて、今回の何度目か分からない3D元年が本当の元年になるかは分かりませんが、そんな機会を捉えた敬資源、敬エネルギーな商品・サービス開発事例をご紹介します。

富士フィルムは、3Dに対応したデジタル撮影機材や映写機がなくとも、既存のフィルムと映写機で3D映画を上映できる特殊レンズを劇場にレンタルするサービスを開始します。(出所:2010年5月2日 日本経済新聞 5面)
 
この記事によりますと、現在、3D映画は撮影から映写までデジタル化されており、1スクリーン当たり1,000万~1,500万円のデジタル映写機がないと上映できません。中小規模の劇場では導入が難しく、昨年は全国約3400スクリーンのうち、3Dを上映できたのは約1割とのこと。

これに対し、富士フィルムが提案しているのは、従来型の映画フィルムに右目用と左目用の映像を1コマずつ交互に焼付け、米テクニカラー社が開発した特殊レンズを貸し出し、そのレンズを通して映写すれば、デジタル映写機と同じように3D映画を上映できるというものです(この方法だと、TRICK2Dも立体映像化できる!?)

レンズは現在普及している映写機なら装着可能で、3D上映用のフィルムは、通常の映画と同様、現像所が映像をフィルムに焼き付けて劇場に届けます。

米国での専用レンズのレンタ料は1作品当たり20万円程度で、富士フィルムもこれと同等の料金設定を予定、レンタル料を除く劇場の初期投資は、3D用スクリーンの導入に必要な100万円程度と、デジタル方式の専用システムを導入する場合と比べて10分の1程度とのことです。

3Dの技術は、カメラ、映写機といった映画の機材のデジタル化を促進しますので、こうしたデジタル機材のメーカにとっては、これまでの機材を一掃し、新しいリプレース需要を生み出すので、積極的に売り出していきたい所でしょう。

ところが、もしこうした技術が一気に普及すれば、これまでの機材は廃棄されます。現像所の設備も不要になります。時として、技術イノベーションは、これまで生産された機器や設備を一気に無用の長物と化してしまいます。

その反面、技術イノベーションは、それが独創的すぎるが故に、普及しない、また別の技術イノベーションに取って代わられることも少なくありません。3D映画の失敗の歴史を見ると、一作品の成功を以って、今後も3D映画が求められるか否かは分かりません。

そうした意味で、富士フィルムの既存の技術・設備を生かす、販売ではなくレンタルでという発想は、買い手の初期投資を大きく抑えることにつながり、3D映画の普及を後押しするものです。

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中ノ森 清訓

株式会社 戦略調達 代表取締役社長

コスト削減・経費削減のヒントを提供する「週刊 戦略調達」、環境負荷を低減する商品・サービスの開発事例や、それを支えるサプライヤなどを紹介する「環境調達.com」を中心に、開発・調達・購買業務とそのマネジメントのあり方について情報提供していきます

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