事業仕分けは、今度は行政事業レビューとして各省毎の事業仕分けへと広がりを見せるなど、非常に(政治的に)効果の高い手法と受け止められているようです。 果たして事業仕分けはムダを省く打ち出の小槌なのでしょうか? あなたもうすうす感じているかと思いますが、事業仕分けは残念ながら万能薬ではありません。それどころか、使われ方によっては単なる偽薬に過ぎないガマの油かもしれません。
といった内に秘めた理由で、表立った抵抗はしませんが、行動を変えることに対して意識的、無意識的なサボタージュがなされています。予算を確保してしまえば、ムダを省く、コスト、経費を削減することに、個々人はモチベーション、インセンティブがありません。オーナー経営者を除いて、組織の金は他人の金であり、1円を稼ぐことの難しさ、大変さを知っているのは、何度もお客さんに断られる営業を経験している人間位です。組織の中には、ムダが心地良い人々がいっぱいです。これまでの行動を変えようとすると、これらの人間がすべて抵抗勢力に回るのです。
地から自動的にお金を吸い上げられる、足りなくなれば簡単に借金ができる仕組みの行政では、こうした傾向は尚更です。
そうした組織の力学を理解せずに、
「仕分け結果を何が何でも守るべきだということではない。国民のさまざまな声は、次期予算編成に当然反映されるべきだ(出所:6月15日 時事通信。探査機「はやぶさ」の帰還を受けて蓮舫行政刷担当相の発言。昨年11月の事業仕分けでは、後継機開発など衛星関連予算を削減と判定していますが、「はやぶさ」の成功でこの仕分け結果の見直しを許容したものと思われます。)」
などという甘い態度を見せれば、一気に抵抗勢力につけ込まれます。ムダの排除、コスト削減、経費削減に対しては、組織のあらゆる人間が抵抗します。こうした中で、それらを進めていくには、一度「変える」と決定したことについて、本当にそれが変えられるまで個々人の行動を徹底することが必要です。
それには、その仕事の担当を替え、その時にムダを省く事、コスト削減・経費削減がその人間の使命であることを明確にした上で任に就けるなどの荒療治が必要です。しかも、それを担当する人間は、組織の中のすべての人間を敵に回す覚悟と、それらの様々な抵抗、サボタージュを打ち破る圧倒的なノウハウがないとムダもコストも経費も省けないのです。
たとえば、4~5月に行なわれた仕分けの対象となった事業は230以上ありました。ここで、様々な行動の提言がなされた訳ですが、一つ一つの指摘に対して、一つ一つの変更に対して、今回申し上げたような攻防が繰り広げられる訳です。果たして、事業仕分け或いはその提言の中に、それらがすべて実施されるのを徹底される仕掛けは含まれているのでしょうか?
一つ一つの提言について、単なる指摘に留まらず、それを実行する、実施に責任を持つ、実施されるような仕組みをつくる、そこまでを行なって初めて、我われのような問題解決に携わる者は、役割を果たしたと言えます。
中ノ森 清訓/株式会社 戦略調達 代表取締役社長
調達・購買業務に関わる代行・アウトソーシング、システム導入、コンサルティングを通じて、お客様の「最善の調達・購買」を実現することにより、調達・購買コスト、物流費用、経費削減を支援する傍ら、日本における調達・購買業務とそのマネジメントの確立に向け、それらの理論化、体系化を行なっている。
コーポレートサイト: http://www.samuraisourcing.com/
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株式会社 戦略調達 代表取締役社長
コスト削減・経費削減のヒントを提供する「週刊 戦略調達」、環境負荷を低減する商品・サービスの開発事例や、それを支えるサプライヤなどを紹介する「環境調達.com」を中心に、開発・調達・購買業務とそのマネジメントのあり方について情報提供していきます