「音痴」という本来の意味から転じて、別の意味を持つようになった4種類の音痴という言葉を解説する。
「音痴」という言葉は、実に情けない響きがある言葉ですね。
本家本元の音楽でいう音痴というのは、音に対して感覚が鈍い人を指すわけですね。特に歌を歌う場合に音が外れている人のことを言う場合が多いわけですが、俗に「調子っぱずれ」などと言います。
歌手(それが仕事)じゃないんですから、一般の人が音痴だからといって何の問題もないですし、むしろそれを強みに人気者になっている人もいるくらいですから、笑ってすみますよね。
その分野についての感覚の鈍い人を言うのに「~音痴」という使い方をしますね。本家本元の音楽での音痴のように笑ってすまない場合が多いかもしれません。
試しに私の専門分野に「音痴」をつけてみましょうか。
「商売音痴」「人事音痴」「人間音痴」「経営音痴」
こう組み合わせると、ほんとに深刻な言葉になりますね。
それぞれ、その意味を縷々言い出すと深くてきりがなくなるんですけれでも、簡潔に解説しておこうと思います。
1.【商売】音痴
儲け方が分からない。いつもボランティア的なことばかりして「人に喜ばれた」と喜んでいる人。時として儲け度外視で心意気で仕事をすることはあってもいいが、常にそうだと会社はつぶれる。「損して得取れ」という先人の言葉を信じ過ぎて、結局得より損が大きくなっていては、商売としてやっている意味がない。
最近は単なるお人好しに憧れる傾向があるが、いい人でいることと、商売をすることは別のことと考えなくてはならない。単なるお人よしの商売音痴は仕事替えを考えなくてはならない。
2.【人事】音痴
人の強み弱みを見抜けない。歴代の総理大臣はそうじゃないかと私は疑っているのだが、適財適所ができないということ。特に人の強み弱みへの勘違いをしている人が多い。強みとは、個々人が持っている資質を徹底的に磨いたもののことを言う。得意分野や経験の長い分野のことを言うのではない。「英会話が得意」というのは単なる特技であり、「慎重さ」のようにその人の資質に関することが強みになる。単に特技で人を見て配置している人を人事音痴という。
3.【人間】音痴
相手の立場になって考えるということができない人。人の心の傷み、喜び、幸せ感、そういうものを自分のこととして感じる力は、人への真摯さとして最も重要なものであるにも関わらず、社会がどんどん自己中心的に生きる環境になっていくに従って失われつつあるもののようである。別名共感音痴ともいう。人間音痴を治す対策は簡単。人と直接接する機会を増やすこと。そして、人の心の傷み、喜び、幸せ感を共有できるレベルできちんと人と向き合うこと。
4.【経営】音痴
全体を俯瞰して見る能力に欠けている人。お金のことが気になればお金に意識が集中し、人のことでトラブルがあればその火消しに夢中になり、お客様探しが遅れていればそのことで頭が一杯になる。同時に3つ以上のことを考え、行動できない人に経営はできない。さらには、過去のことと今のことと未来のことを同時に考えられる能力も不可欠だ。過去の後悔にばかり意識が支配されている人。今目の前のことを乗り越えるのに精一杯で「今を生きる」などと言っている人。20年も30年も先の夢ばかり追いかけて現実が見えてない人。
最後に重要なことを言いますね。音痴というのが一番やっかいなのは、本人がそうだということに気がつかないことも多い、ということなんですよ。自分が「~音痴」じゃないかどうか、親しい人に一度診断してもらった方がよいかもしれません。
人事組織
2010.04.28
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2010.04.21
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2010.03.06
今野 誠一
株式会社マングローブ 代表取締役社長
組織変革及びその担い手となる管理職の人材開発を強みとする「組織人事コンサルティング会社」を経営。 設立以来15年、組織変革コンサルタント、ファシリテーターとしてこれまでに約600社の組織変革に携わっている。