企業理念ってホントに必要なの?

2010.04.07

組織・人材

企業理念ってホントに必要なの?

今野 誠一
株式会社マングローブ 代表取締役社長

「企業理念が大切だ」とよく言われるが、果たしてすべての企業に必要なものなのか、その存在意義を再考する。

◆企業理念を浸透させたい

「企業理念を浸透させたい」という願いは、企業の規模や業態を問わず、経営者の共通の、しかも大きな願いになっています。ここ数年、コンサルティング会社である弊社に企業理念の構築と浸透のご相談が急増していることからもそのことがわかります。

しかし、その願いとは裏腹に、企業理念の真意を組織に効果的に浸透させ、社員の意識と行動を変えることに成功している企業は、そんなに多くないというのも現実です。うまく浸透できない原因の主なものをあげてみましょう。

・設立して間もなく、経営が軌道に乗っていないために、せっかく作った企業理念を顧みる余裕がなく、お飾りになっている。

・「企業理念」を日常活動と別のものとして、他社のモノマネやカッコイイ語感だけで作っているので、社長の魂がこもらず、社員にもなじまない。

・「企業理念」を単体で、繰り返し唱えさせたり持参させたりして、強引に浸透させようとしている。(企業理念というものの位置づけが理解できていない)

◆企業理念は必要か
浸透できない原因を3つ挙げましたが、一つ目の問題の「軌道に乗るまで」の問題は、そもそも論としてよく考えてみて欲しい問題です。「我が社もいよいよ企業理念を制定する」と宣言して鳴り物入りで決めたものの、余裕がなくて浸透できないどころか、社長すらも忘れてしまっているような場合は、チームに与えるマイナスは甚大で、いっそ最初からないほうがまだマシだということにもなってしまいます。

実際、企業理念がないと組織が成り立たないというわけではありません。企業理念らしきものは特にないのに、リーダーを中心に一枚岩となって目標に向かって燃えている集団はいくらでもあるのです。特に創業したばかりの頃は、大いなる夢と志を持ってスタートした直後です。軌道に乗せるために寝食すらも忘れて働いている時には、創業のメンバーの絆も強く、夢と志のためには遠慮せずに
お互いに言いたいことを言い合い、何らの迷いもなく、組織の中の問題も起こるようなことのない時期なわけです。組織には「目的の力」が作用します。

全員が目的を同じように理解し、同じレベルで意識し、それを追いかけている時には、そこにある資源(人材、資金、時間etc)が、黙っていても目的のために集中的に使われることになります。日頃発生する色々な判断の局面でもそれは同じで、「経営を軌道に乗せる」という明快な目的の元では、価値観の絞込みがほぼ自動的にできており、判断がブレて問題になるようなこともさほど起こりません。

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今野 誠一

今野 誠一

株式会社マングローブ 代表取締役社長

組織変革及びその担い手となる管理職の人材開発を強みとする「組織人事コンサルティング会社」を経営。 設立以来15年、組織変革コンサルタント、ファシリテーターとしてこれまでに約600社の組織変革に携わっている。

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