昨今の経済情勢を踏まえた幹部育成のあり方
社長とは最も孤独な商売だと言われます。未曾有の不況の中、
多くの社長が孤独感はもとより、大きな危機感、焦燥感に
さいなまれていることでしょう。社長が今最も求めているものは
心から信頼できる幹部、つまり「経営の同志」ではないでしょうか。
企業の発展を担うのは社長だけではありません。優秀な仲間が集まり、
理想像に向かって互いに支え合うことで、組織の原動力が生まれ成果が
得られます。そして、それを引き出す役割こそ今、幹部に求められています。
ただ、残念なことに多く企業では、『幹部力』を備えた人材が
十分存在しているようには見受けられません。
では、『幹部力』とは一体どういうことで、身につけるためには、
具体的に何をするべきなのでしょうか。今回から数回に亘って、
昨今の経済情勢を踏まえた幹部育成のあり方をご紹介します。
幹部を育成する研修プログラムには、戦略立案やロジカルシンキングや、
コミュニケーションスキルなど、テクニカルなものが多くを占めています。
こうした教育に意味がないとは言いませんが、この不況時に慌てて
テクニカルな教育をしていても間に合いませんし、
本来、そうしたスキルは幹部になる前に行っておくべきものです。
『幹部力』とは新しい概念ですが、すべての基本は「経営の同志」か
どうかということにあり、不況時の幹部教育を考える際にも、
いかにして幹部に「経営の同志」になってもらうかがまずもって先決です。
同志という意味は、経営・社員という分類で考えた場合に、
身も心も社員サイドではなく、経営サイドになるということです。
経営サイドという意味は、雇われ意識ではなく、経営者意識で事業に
当たるということですが、これは天と地ほどの差があります。
経営メンバーの中に、社員意識で受け身でいたり、社長との信頼関係のない
メンバーがいることは、社長にとっては致命傷と言ってもいい大問題です。
創業メンバーは、社長の意思への共感度が強いですが、
後から合流した経営メンバーはそこに問題が生じます。後から合流した
経営メンバーに、経営の意思や社長としての自分の考え方にどう共感を
得るかということが重要になります。幹部教育は、まず「社長の意思への共感」
を高めるために行われなくてはなりません。
一つ具体的な事例を挙げます。ビル設備会社A社では、
これまでリーダーシップの強い経営者が会社を牽引していました。
幹部は経営課題を考えるというよりむしろ、社長が考えたことを
ひたすら実践することで、現場の第一戦として会社を支えてきました。
しかし一方で、会社の将来を考えることは「自分の役割ではない」という
意識を一部の幹部が持ち、幹部内で個人の意識に温度差が生じ、
経営陣に一体感が薄れ始めていました。
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今野 誠一
株式会社マングローブ 代表取締役社長
組織変革及びその担い手となる管理職の人材開発を強みとする「組織人事コンサルティング会社」を経営。 設立以来15年、組織変革コンサルタント、ファシリテーターとしてこれまでに約600社の組織変革に携わっている。