米所、米菓王国として知られる新潟の菓子メーカー・末広製菓。静かなブームが広がるその製品に隠された、意外なる優良企業の姿を解き明かしてみる。
お笑いコンビ・くりぃむしちゅーがラジオ番組・オールナイトニッポンで、ハマリっぷりを公言したり、某人気サイトでも反則級に美味しいと激賞されたりと、そろそろ大ブレイクの予感がする商品がある。新潟市に本社と工場を構える末広製菓の「良味100選 揚げおかき」である。くりぃむしちゅーのお気に入りは、そのシリーズの中の「良味100選 両横綱 中辛カレー味」だという。しかし、米菓メーカーの末広製菓の真骨頂は、本業のせんべいやおかき以外の所にあると筆者は見た。
末広製菓のことを調べてみるとなかなか興味深いことがわかる。「山崎製パン株式会社」の子会社だ。同社ホームページとWikipediaを見ると、1970年代初頭に経緯英危機に陥った際に、山崎製パンの出資を受け再建。1983年に完全子会社になったとある。2007年に「食品リサイクル推進環境大臣賞・奨励賞」を受賞した、「パンの耳スナック」を製造している。「何とうまいことをやったもんだ!」と当思ったのを記憶している。「パンの耳から生まれた・揚げパンスナック・ シナモンシュガー味」という商品で、姉妹商品の「パンの耳から生まれた・スティックラスク・フレンチトースト味」もある。
環境省の資料によると、パンの耳スナックは従来、飼料工場に送られて家畜飼料にされていた。それを同社が試行錯誤を重ねて、パンの耳のうち17%を再利用可能にして、スナック菓子製造工程に組み入れ製品化したという。菓子原料の輸入コーンスターチを60%削減することに成功し、製品は山崎製パングループのデイリーヤマザキなど6,000店舗で販売されているほか、「無印良品」にもOEM供給されているという。
環境省はエコロジー活動として評価しているが、この取り組みは経営的にも非常に意義深い。そもそも、何故、米菓メーカーで「パンの耳」がでるのかといえば、同社は事業の柱として「デリカ事業」を行っているからだ。弁当、調理パン(サンドイッチ)、調理麺を製造し、県内外のデイリーヤマザキに出荷している。
パンの耳から可視を製造する技術は、山崎製パン本体にもフィードバックされている。ひとくちサイズにカットしたパンの耳を、チョコでコーティングしたという「チョコの山」がそれだ。山崎製パンのホームページでも先月のイチオシ商品として掲載され、人気商品になっているという。
「シナジー」という言葉がよく用いられる。シナジーとは、企業の事業観の関係を表し、事業に相乗効果が働き、100+100=200以上になっていれば、シナジーが働いているということになる。しかし、事業はそんなに甘くはない。実際には100+100=150程度にしかならない例も少なくない。その、シナジーの反対の状態を「アナジー」と呼ぶ。企業合併が破談になるケースの一つは、精査するとシナジーどころかアナジーが働く恐れが出てくることなどが挙げられる。ダイムラーとクライスラーの例が顕著だ。
シナジーが必要な場合は、「アンゾフのマトリクス」で考えれば、「新規市場」に「新製品」を投入する「多角化」の成長戦略を選択する場合だ。特性がよくわかっていない顧客や市場を相手に、なれていない製品を製造・販売するリスクを軽減するためには、シナジーが必要なのだ。工場などの製造設備や原材料が共有できる「生産シナジー」。流通チャネルや物流網を共有できる「販売シナジー」。特許技術やブランドが共有できる「投資シナジー」。人材や経営ノウハウが共有できる「経営シナジー」などがある。
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2009.02.10
2015.01.26
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。