起業講座3:いまだかつてない、クレープ1,000店戦略(1)

2010.03.13

経営・マネジメント

起業講座3:いまだかつてない、クレープ1,000店戦略(1)

INSIGHT NOW! 編集部
インサイトナウ株式会社

『INSIGHT NOW!』勉強会のなかから、インキュベーション事業を行うPE&HR株式会社が開催した会の特別レポートです。本勉強会では、特別講師として、投資先のなかでも、成長著しい注目のベンチャー起業家4名が招聘されました。「ベンチャー企業の生成と発展」のメカニズムを解明し、『起業の本質』に迫った当日の内容から、PE&HR社にレポートいただき、読者の皆さんに公開いたします。

■世の中に問うような、一生を賭ける事業を探す
 川上氏は、どのような視点でクレープ業界に参入したのか。

 「もともと決めていたんですけれども、40歳までには一生を賭けて積み上げていくような事業に取り組みたいと思っていました。35歳でまるっきりフリーになった。いいチャンスだと思いました。そこから世の中に問うブランドを作ろうということで、何の事業をやったらいいか構想を練り始めました。」

 川上氏は、「感動・おどろき・おもてなし」という人生のテーマを持っている。これは、モミアンドトイ社の三つのキーワードでもある。フリーになった川上氏は、経験してきたフードの世界でやっていこうと決め、手がける業態を探していた。収益性が高く、事業の成長余力が大きいという条件を設定し、重飲食(※2)から居酒屋、洋菓子店などいろいろな業態を見ていったなか、浮上してきたのがクレープ店だった。

※2 重飲食
店舗仲介で使われる用語で、焼肉・ラーメン・中華・カレー等の業態のことを指す。一方、小規模な厨房機器のカフェやファーストフード、バー等は、軽飲食と呼ばれる。

 「今の会社(モミアンドトイ社)をはじめる前に、売却した前の会社の株主だった方からお声がけをいただいて、店舗不動産の仲介専門会社で半年くらい働いていたことがありました。お手伝いをしながら、アンテナを高くし、フードの世界の何が良いのかをずっと見ていました。クレープってあまり食べたことがなくて、並ぶのも恥ずかしいなって思うくらいだったんです。ただ、ビジネスとして考えて、ちょっと食べてみようかと思って食べたら、どこのクレープか忘れたんですけど、気絶するくらいおいしくなかった。これで商売が成り立っていると想像すると、物凄いことだなと思って、そこからクレープに興味を持ったんです。」

 「クレープ業界について調べてみると、あまりブランディングされていなくて、硬直している業態といいますか、さほど進化がなくとも生き残っている業態であることが分かってきました。なので、もっと良いサービスを提供していければ、大きく成長できるチャンスがあると考えていました。」

■出来上がったマーケットにビジネスチャンスを感じた
 クレープは、フランス生まれの食べ物で、日常食として広く一般に親しまれている。日本のクレープの歴史は約30年。当初は、なかなか売れなかったようである。そこで、イチゴや生クリームを入れ、10代~20代の若い女性をターゲットに、観光地で売られるスイーツとしての地位を確立してきたという。川上氏は、さらに独自の調査を続けた。
 
 「日本では、観光特性の高いエリアや遊園地、アウトレットモールなどの限られた立地でしか出店できないという、日式クレープマーケットが出来上がってきたわけです。実はここにもう一つ、大きなビジネスチャンスを感じました。フランスのような生活に根付いた食べ物に変えていければ、生活立地(=観光特性が低い立地)でも成立するのではないかと。2010年の事業計画で、サーティーワンアイスクリームが日本国内1,000店舗を超える見通しですが、クレープも業態を工夫することで、同じような規模、つまり1,000店舗の出店が可能だと、起業時に思いました。」

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