起業講座3:いまだかつてない、クレープ1,000店戦略(1)

2010.03.13

経営・マネジメント

起業講座3:いまだかつてない、クレープ1,000店戦略(1)

INSIGHT NOW! 編集部
インサイトナウ株式会社

『INSIGHT NOW!』勉強会のなかから、インキュベーション事業を行うPE&HR株式会社が開催した会の特別レポートです。本勉強会では、特別講師として、投資先のなかでも、成長著しい注目のベンチャー起業家4名が招聘されました。「ベンチャー企業の生成と発展」のメカニズムを解明し、『起業の本質』に迫った当日の内容から、PE&HR社にレポートいただき、読者の皆さんに公開いたします。

 川上氏は、23歳のとき、オーナー兼パティシエとしてチーズケーキ店をスタートした。しかし、それまでに川上氏はケーキを1度も作ったことがなかったという。「相当苦労しました。なんか勘違いをしていましたね」と苦笑いをしながら、当時を振り返った。

 「そもそも自分のケーキを買ってもらえるなんて奇跡だと思っていたくらい商品に自信がなかった。お客さんからおいしいねって言ってもらえると、嘘だって思うくらいでした。当然SPをやるんですけど、当時ブランディングなんて発想はないので、どうすれば買ってもらえるかっていうことを考えまして、マーケティングを一生懸命やっていたんです。」

 「例えば、ケーキを小さく切って、ピンポーンと1軒1軒食べてもらうんですよ。売るんじゃなくて、ケーキ食べてください、って訪問営業するケーキ屋さんなんてないじゃないですか。気持悪いじゃないですか。あとは、駅前に机を持っていって布をかけて、そこで販売しながらチラシを撒くとかですね。昔だから許されたというのもありますが、とにかく23歳の何の経験もない僕が思いつく販促は全部やって、やって、やり尽くしていった。なので、やらない先輩方よりも売れるわけですよ。うちのケーキはまずいんだって思い続けていたので、少しでもまずくないケーキを作ろうと日々改良していった。おいしくないから高い金額を頂けないので、少し値段を安めに設定した。どこまで売れたら繁盛店って言われるのか分からなかったので、とにかく売れるために何でもやっていったら、気づくと値段の割りにおいしいねって言われるようになり、商売も伸びていきました。」

■ケーキ店の経営から、ベンチャーの経営へ
 23歳の若者が始めたケーキ店は、3年目に2店舗目を出店し、その後順調に拡大し、4店舗と洋菓子販売店1店舗になっていた。一方で、事業の伸びに限界を感じ始めてもいたという。

 「当時は、事業の成長性ということを考えてコンテンツ(商品やビジネスモデル)作りをしなかったので、伸びしろがなかったですね。この先どう成長すれば良いのかっていうことが見えなかった。ジレンマを感じていたというか。自分があまり店に行かなくても、商品がケースに並べられ、売れていく仕組みくらいは出来たので、仕事しなくなっちゃうんですね。仕事に行かなくなっちゃう。そこは乗り越えられなかった。」

 30歳になる頃、川上氏は、もう少し大きく事業をやりたいと思い、フード業界のコンサルティング会社を立ち上げた。この会社では、増資や借入を積極的に行い、数億円規模の資金を調達して、上場を目指した。コンサルティング会社の経営に集中するため、儲かっていたケーキの会社は売却している。そして、経営を続けていくなかで株主と方向性に違いが出て、自分の思うように事業が進めにくい面もあったという。ちょうど35歳の頃、このコンサルティング会社は既存株主であった事業会社に譲渡することになった。2社目のベンチャー企業を起業したことで、経営者として鍛えられたという。

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