「博多 一風堂」など、日本のラーメン界を牽引してきた河原成美さん。2018年に経営の第一線から身を引くという河原さんは、どのような人物に「一風堂を継いでもらいたい」と考えているのだろうか? [嶋田淑之,Business Media 誠]
余人をもっては代え難い存在
力の源カンパニーの成長目標について河原さんは具体的にこう語る。
「2018年までに一風堂は150店舗に増やします。五行は30店舗。今秋オープン予定のチャンポンのお店とミドルマーケット向けラーメン店が各30店舗で合計60店舗にします。海外は、12~13カ国に30~40店舗を展開します。
僕は、これらが全部“暖簾分け”でもいいと思っています。また、国内で『共同仕入組合』を設立し、すでに稼働しています。これは、2018年までに年間1500億円ほどの規模にしたい」
こうした数字の数々を耳にして、正直、筆者は驚いた。承継に向けて成長路線をひた走るかに見える力の源カンパニー。それが実現すれば、確かに国内外に確固たる地位を占めるグローバル企業になるだろう。ただし、それは同社がこれまで経験したことのない、いかなる未知の環境変化に遭遇した場合においても、不変と革新を的確に識別しつつ、不変を貫徹、変革を断行し得てこそ、の話である。
そのためには、河原さんに加えて、彼の“分身”と呼べる実力者が多数必要となることであろう。しかも、2018年以降その河原さんはもういない。
たった1回インタビューでお会いしただけであるが、河原さんという人は、実に多様な要素をお持ちの方である。俳優出身で、自分のお店や会社をステージに見立てて、自ら演じ、お客さんたちを喜ばせることに自らの喜びを感じるエンターテイナーとしての側面。博多の小さなラーメン店・店主から出発して、数々の困難を乗り越えて、ついには世界進出を果たすなど、常に高い目標を設定してそれを達成していくチャレンジャーとしての側面。
それまで誰も思い及ばなかったような食のコンセプトを編み出し、自らのセンスと技術でそれを実現して九州のラーメン界を一新し、やがては日本全体のラーメン業界のあり方まで変えてしまい、とうとうラーメンを日本文化として世界に広め得る存在へと高めたイノベーターとしての側面。
これだけの多様性をもった人材というのは、そうそういるものではあるまい。しかも、河原さんを形成する本質的な要素は、決してそれだけではないのだ。
名門老舗企業経営者にも通じる仏教的世界観
前編でも触れたが、河原さんの世界観・人生観はきわめて仏教的である。
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「博多 一風堂」河原成美物語
2009.10.01
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