「博多 一風堂」など、日本のラーメン界を牽引してきた河原成美さん。2018年に経営の第一線から身を引くという河原さんは、どのような人物に「一風堂を継いでもらいたい」と考えているのだろうか? [嶋田淑之,Business Media 誠]
「博多 一風堂」(以下、一風堂)をはじめとする数々の業態を成功させ、日本のラーメン界のリーダーの1人として世界戦略を推進している力の源カンパニー代表取締役・河原成美さん(56歳)。
彼の思いや美学、哲学を紹介してきたが、5・6編では、河原さんが経営の第一線から身を引くという2018年に向けて、事業承継の問題をどのように考え、いかに準備しているのか明らかにしたいと思う。
承継は内部スタッフ? それとも外部の新しい血?
「う~ん、本当に頭の痛い問題ですよ、これは……」と珍しく渋面を作る河原さん。どんなに優秀な経営者であっても、次世代への事業承継は業種を問わず困難を極める問題だ。
「飲食業に携わるようになってからちょうど40周年に当たる2018年に、経営の第一線から身を引く決意をしています。逆算すると2013年までには事業承継のメドをつけないといけない。それまでに、自社内で後継者が見つかればそれでよし。でも、どうしても見つからない場合には外部からスカウトすることを考えます。
後者の場合、優秀な人材が『是非、承継したい』と思わなければいけません。そんな魅力が必要となりますから、そのための1つの方法として株式上場を果たしたいと思っています。海外での上場を視野に入れて、規模的には年商300億円の企業にしておきたいと考えています」
いざとなれば外部から人材登用を……と言う河原さんであるが、できることならこれまで手塩にかけて育ててきたスタッフからそれにふさわしい人材が現れてほしいと念願しているであろうことは、筆者にも痛いほど伝わってくる。その証拠にというか、河原さんの人材発掘・育成へのエネルギーの傾注ぶりはハンパではない。
人材の発掘・育成への尋常ならざる覚悟と傾注
1995年からスタートした自社革新「10年目の原点」プロジェクトを断行しつつあった1999年のこと。河原さんは、周囲の反対を押し切って、福岡市に1億4000万円かけて工場兼研修施設を建設。商品開発力の強化と人材開発の促進のための仕組みを構築した。
ようやく個人商店から企業へと脱皮しつつあった企業レベルを考えるならば、これは勇気ある決断であった。こうした場を用いた教育プログラムは、年々、充実度を増している。
「今年、全社員を対象にした『力の源アカデミー』を開講しました。(力の源アカデミーで)3カ年で5科目32単位を取得すれば、少なくとも店をつぶさない程度の基礎知識を身につけることができます。これは、現場のリーダー作りです。また『河原塾』を作りまして、ここでは後継者作りに力を注いでいます」
次のページ「博多 一風堂」ニューヨーク店成功に見る世界戦略の成算
続きは会員限定です。無料の読者会員に登録すると続きをお読みいただけます。
- 会員登録 (無料)
- ログインはこちら
「博多 一風堂」河原成美物語
2009.10.01
2009.09.30
2009.09.24
2009.09.18
2009.09.16
2009.09.11