「セレブも夢中!」と、ハリウッド効果で注目度が急上昇中のソーシャル・メディア・ツール、ツイッター。そのビジネス価値について考察したい。
やはり世の中というのは本質的にミーハーなのだ。先のメルマガのように、日本でもツイッターについて聴かれる話題はもっばらセレブ絡みのようだ。ビジネスの世界でもツイッターは活躍しているのに、あまりにもセレブの話題がクローズアップされすぎて、ツイッターのビジネス価値が理解されないままになってしまうのではないかと個人的には少し懸念している。
私見になるが、ツイッターは、「子供の遊び」や「セレブの暇つぶし」として片付けられるべきではない。企業が、これからの動きを真剣にウォッチしていくべきツールだと私は思っている。
その理由は、ツイッターは、企業が「顧客との距離を縮める」上で、絶好のツールであると思うからだ。拙著の書評で、小飼弾氏が「顧客に近い者勝ち」という言葉を下さって、私もこれには、「なるほど」と頷いたが、市場が激変する中で、「顧客とお近づきになれない企業には勝算がない」時代になってきている。企業が顧客に聞かせたいことを、ビルの屋上からメガホンでまくし立てて、それを「マーケティング」と呼ぶ感覚はもう時代遅れだ。企業が、「企業」というのっぺらぼうでなく、個性を出し、素顔で、顧客と円卓を囲みながらおしゃべりする、そういうマーケティング・スタイルに変えていけなければ未来はない。
ツイッターを通じて、「顧客との距離を縮める」ことで、大いに成果を挙げているのが、アメリカのザッポスという会社だ。ザッポスは、ネットで靴やアパレルなどを販売している会社だが、「顧客と、パーソナル、かつ感情的なつながりを築くサービス体験」の提供を、ほんとうの意味での「売り物」としている。そのザッポスでは、ツイッターを、「個々の顧客とつながる、格好のツール」と捉え、CEOトニー・シェイ自ら、その利用を推進している。彼の投稿への登録者数は、なんと、55万人を数える。
アメリカ広しといえども、トニー・シェイほど、ツイッターの本質を理解し、ツイッターを使いこなしている経営者はいない。トニーは、ツイッターを通じて、私生活とビジネスの障壁を超え、彼が今取り組んでいること、見聞きしたこと、考えたことを実にオープンに発信している。投稿を読んでいると、彼の人柄がごく身近に感じられてくる。そればかりでなく、「ザッポス・ブランド」が、ユーモア、誠実さ、楽しさなどの性質を備えた、「人格」として印象づけられてくるのである。彼のメッセージを日々受け取る55万人にとって、ザッポスはいつしか、「なじみの店」になっている。
このように、今、アメリカでは、ツイッターを巡っていろいろと刺激的な試みが起こっている。巷で報道されているように、セレブがやっているだけではないのだ。次回は、ツイッターが、「今どきの消費者」のライフスタイルやマインドセットにうまくマッチし、マーケティングの新境地を切り開いている所以を、キーワードと事例を挙げながらお話ししていく。
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ダイナ・サーチ、インク 代表
ダイナ・サーチ、インク代表 https://www.dyna-search.com/jp/ 一般社団法人コア・バリュー経営協会理事 https://www.corevalue.or.jp/ 南カリフォルニア大学オペレーション・リサーチ学科修士課程修了。米国企業で経験を積んだのち、1982年に日米間のビジネス・コンサルティング会社、ダイナ・サーチ(Dyna-Search, Inc.)をカリフォルニア州ロサンゼルスに設立。米優良企業の研究を通し、日本企業の革新を支援してきた。アメリカのネット通販会社ザッポスや、規模ではなく偉大さを追求する中小企業群スモール・ジャイアンツなどの研究を踏まえ、生活者主体の時代に対応する経営革新手法として「コア・バリュー経営」を提唱。2009年以来、社員も顧客もハッピーで、生産性の高い会社を目指す志の高い経営者を対象に、コンサルティング・執筆・講演・リーダーシップ教育活動を精力的に行っている。主な著書に、『コア・バリュー・リーダーシップ』(PHPエディターズ・グループ)、『アメリカで「小さいのに偉大だ!」といわれる企業のシンプルで強い戦略』(PHP研究所)、『ザッポスの奇跡 改訂版 ~アマゾンが屈した史上最強の新経営戦略~』(廣済堂出版)、『未来企業は共に夢を見る ―コア・バリュー経営―』(東京図書出版)などがある。