ビジョナリーハンドブック(1):ビジョナリーのパラドックス

2009.01.07

経営・マネジメント

ビジョナリーハンドブック(1):ビジョナリーのパラドックス

松尾 順
有限会社シャープマインド マーケティング・プロデューサー

ビジョナリーハンドブック(The Visionary's Handbook)は、 「そもそも世の中は矛盾だらけである」 ということを大前提に置いています。 言い換えると、 「この世の中に、絶対的な真理や正解はない」 ということです。

例えば近年、コダックや富士フィルムなどのフィルムメーカーは、
デジタルカメラの普及によって、従来の「銀塩フィルム」は、
ごく一部の利用者にのみ必要とされるだけの

「過去の製品」

になってしまうという予測が確実になればなるほど、
未来の技術であるデジタルイメージング関連の技術の
開発と製品化に力を入れざるを得なくなりました。

これは、当然ながらこれまで会社を支えてきた
銀塩フィルム関連製品、関連部門の縮小や人員の配置転換
といった経営・組織の不安定化に対処せざるを得ませんでした。

このように、様々な企業(個人)において、

・将来の収益製品・部門

と、

・現在の収益製品・部門

との間でさまざまな点において利害の対立が
しばしば発生します。

もし、現在の収益製品・部門の力が強すぎると、
次世代製品への移行が遅れてしまい、未来においては
淘汰されてしまうわけです。

こうして消滅してしまった企業はたくさんありますね。

ですから、ビジョナリーとしては、
こうした将来と現在の間で発生するパラドックスを
見逃してはいけないわけです。

ビジョナリーハンドブックでは、
前述した2つ以外にも、いくつかの

「ビジョナリーのパラドックス」

が示されていますが、
最後にあと1つだけ紹介しておきたいのが
次のパラドックスです。

“自分(自社)の将来像がどのようなものであれ、
 その通りになることはないと予想しなければならない”

要するに、

「自分が描いたとおりの未来になることはないと
 最初から覚悟しておけ!」

ということですね。

これは、前回も書いたように、
周囲の環境変化に応じて

「予見」

そのものをしばしば見直すことの重要性を示唆するものであり、
また、予見に依存しすぎることを戒めるパラドックスだと
言えそうです。

そもそも、未来を予見することは、
未来がどうなるかを的中させることが
最大の目的ではありません。

極端な話、予見が外れてもいいのです。

『未来学』の著者、根本昌彦氏が主張しているように、
未来を予見することは、

“現在の条件を元に、未来のあらゆる可能性を考えること”

であり、

“将来の危機を回避するためや、未来を創造するためのもの”

だと言えるでしょう。

『The Visionary's Handbook:Nine Paradoxes That Will Shape
The Future of Your Business』
(Watts Wacker,Jim Taylor,Howard B. Means著,Harperbusiness)

→アマゾンはこちらから(ハードカバー)

*ペーパーバックもあります。
*現在は、出品者からしか手に入らないようです。

『未来学』(根本昌彦著、WAVE出版)
→アマゾンはこちらから

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松尾 順

有限会社シャープマインド マーケティング・プロデューサー

これからは、顧客心理の的確な分析・解釈がビジネス成功の鍵を握る。 こう考えて、心理学とマーケティングの融合を目指す「マインドリーディング」を提唱しています。

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