1ヶ月間、愛を確かめるために走れるか?

2008.12.05

営業・マーケティング

1ヶ月間、愛を確かめるために走れるか?

中村 修治
有限会社ペーパーカンパニー 株式会社キナックスホールディングス 代表取締役

リアルタイム・インタラクティブ・ドキュメンタリーと銘打った「LOVE DISTANCE」というサイトをご存じだろうか。音楽に坂本龍一を起用するなど、とても作品性も高く、実験的なネットプロモーションなのだが、どうもしっくりこない。どうしてなのか?

問題は、「作品性が高すぎる」ところだ。

「距離」の問題ではなく、
「高さ」の問題が、
このネットプロモーションのネックではないだろうか。

クリスマスにクライアントが明かされると言うが・・・
それがどの企業かと議論するのは、広告業界くらいのものだろう。
ユーザーにとって期間限定「非ブランド」であることは、
あまり価値がない。
サイト自体が、
業界に向けられて発信されている気がするのは、私だけだろうか。
このサイトには、
ユーザーの前に「業界という高い壁」が聳え立っている。

実は、このドキュメンタリーは広告です。
12.24の聖夜、
クライアントが明かされます。
これから1ヶ月をかけて、
CFを制作していきます。

・・・と宣言されているように「LOVE DISTANCE」は、
「非ブランドサイト」とか「ネットプロモーション」というジャンルの企画ではなく、
ネット内で一番先行している「広告」を目指している。

日々更新される時間を共有し、共感し・・・
最後に、クレジットで広告主が出てくる。

15秒や30秒の広告ではなく、
1ヶ月を越える「時間」への挑戦をする「ながーい広告」なのだ。
そう言われるとますます手法としては、面白いのだが・・・。
結局、ながーい期間で繰り広げるイメージ広告ってこと?
ROI=投資回収の面から見ると、辛いのではないか。

ネットの中で、
その「作品自体=コンテンツ」の作品性の高さは、ネックだ。
コンテンツ自体が、
従来のテレビ広告の作り方から脱却できていない。

テレビ広告は、一方的に受けるものだから、
一瞬一瞬の「作品性の高さ」が重要になる。
映像的な完成度も高い方が良い。
しかしながら、パソコンの中で、自らが選び取って見る広告には、
「個の貼り込む余白」がなくてはいけない。
「LOVE DISTANCE」全篇から漂う空気には、
素人の入り込む「余白」がない。

「LOVE DISTANCE」を実現させた広告主は、クリスマスまでわからないが。その広告主は、きっと、テレビ広告の費用の一部を、ネットに転用して新しい「広告」手法を模索したと考える。要は、従来のプロモーションコストの配分モデルのなかでWebを使ったアイデアを実現させているに過ぎないのではないだろうか。

「非ブランドサイト」を保有したり、このようなネット内での「非ブランド広告」を実行するには、組織構造とマーケティングコストのかけ方自体を再編成しなければならないのではないかと思う。

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中村 修治

有限会社ペーパーカンパニー 株式会社キナックスホールディングス 代表取締役

昭和30年代後半、近江商人発祥の地で産まれる。立命館大学経済学部を卒業後、大手プロダクションへ入社。1994年に、企画会社ペーパーカンパニーを設立する。 その後、年間150本近い企画書を夜な夜な書く生活を続けるうちに覚醒。たくさんの広告代理店やたくさんの企業の皆様と酔狂な関係を築き、皆様のお陰を持ちまして、現在に至る。そんな「全身企画屋」である。

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