2004年、世界一多くのビールを集める店としてギネスから認定されたデリリウムカフェ。その記念すべきアジア第一号店は、事業責任者・菅原氏の緻密な戦略と大胆なアクションから生まれた。
「いつの間にかうちは、ある種の聖地みたいになっているようです。僕が次にどんなビールを仕入れてくるのかを、みんなとても気にしてくれていますし。それに僕も答えたいと思います。新しいからいいのではない、今度来る新しいビールはきっとうまいんだろうと信じてもらっています。」
新しく入ったビールを菅原氏のブログに書けば、まずはそうした熱心なファンが飲みにきてくれる。そして彼らがデリリウムカフェのエヴァンジェリストとして、自分のブログにせっせと書いて情報発進してくれる。それを読んだフォロワーたちが店に引き寄せられてくる。まさにネット時代をフル活用した自然発生的なプロモーションがデリリウムカフェの周りで起こっているのだ。
▲2007年6月、醸造所でサーバーからビールを注ぐ菅原氏。
■ムダの美学を貫き、次はアジアへ
「そんな動きがネット上で起こればいいなと、ある程度意識はしていました。そのためには我々がベルギービールをもっと日本中、そしてアジアでも情報の発信源となっていかなくてならない。もっと前に出ていかないといけない。」
デリリウムカフェはただ数多くのベルギービールを集めているのではない。店に置くアイテムのバランスを徹底的に細かく考え抜いているのが菅原流。だからあえてベルギービールには珍しい苦みの強いタイプまで揃えている。そして味わいは世界屈指と思えるものしか置かない。
「いくら自分がベルギービールを好きで、よく知っているからと言って自分の好みだけで品揃えをしちゃサービス業失格です。わかっているからこそ、店に来てくれるお客様の顔を思い浮かべながら買い付けしないとね」
一方では、常に顧客視点を失わないのが菅原氏の繊細さとスケールの大きさの証だろう。若くして、ここまでの器をもった人材であれば投資や出資の話もひっきりなしに寄せられるはずだ。
「地方への出店や株式公開とかを薦める方もいます。でも、もし公開すると、店に来られるお客様だけに集中できなくなっちゃうでしょう。株主のことを意識したとき、僕のムダの美学は、僕の考えている通りに追求できなくなる恐れがある。それはやりたくないのです」
そもそも飲食店はキャパが決まっている。すなわち原理的に、単店では成長し続けることができないビジネスである。そこで多店舗展開に乗り出すわけだが、そうなると今度は新規出店自体が目的化し道を誤るケースも出てくる。
「出店が目的になると、無理なプランが必ず出てくる。そのツケは最終的にお客様にまわってしまう。正直自分も失敗してきたこともあり、そんなことは絶対にやりたくないわけです」
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FMO第16弾【デリリウムカフェ】
2008.11.11
2008.11.06
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2008.10.21