2004年、世界一多くのビールを集める店としてギネスから認定されたデリリウムカフェ。その記念すべきアジア第一号店は、事業責任者・菅原氏の緻密な戦略と大胆なアクションから生まれた。
第3回
「デリリウムカフェ、アジア一号店」
■ビールの神様が降臨した夜
「ムダの美学が、僕らの武器になる。これで勝てる、そう確信しました」
本場ベルギーで、そのビール文化の豊かさと底知れない奥深さに触れた菅原氏は、ビジネスモデルのコアコンセプトを掴む。それが『ムダの美学』だ。
「とにかく種類の多さが強烈な魅力なんです。いろんな種類があるから選ぶ楽しさがある。お客様にマイ・ベルギービールを見つける行為そのものを楽しんでいただける店を作ること。これが僕のやりたかったことなんだって」
ムダを活かすのは、日本上陸当初のスタバやタリーズにも通じる考え方だ。それまでの喫茶店、コーヒーショップが効率重視で、一人でも多くのお客様を詰め込もうという設計だったのに対して、シアトル系はゆったりとした雰囲気を打ち出し、それが新鮮さな魅力として支持された。
「プラス、ロングテールです。探せば、きっと自分好みのものが見つかる。それを手に入れることができる。ネットでは当たり前になりつつあることをリアルなお店で体験ができれば、これは必ず当たるだろうと」
そのためにはギネス認定・世界一数多くの種類を備えたデリリウムカフェとの提携が必要。思いついたらすぐに行動に移すフットワークの軽さが菅原氏に道を開く。
「是が非にでも提携したいんだってメールを送りました。ところが待てど暮らせどなしのつぶて。これはもう行って直接交渉するしかないとベルギーのビール祭りに合わせて乗り込んでいったんですよ」
フェスタではデリリウムの醸造所ブースに、3日間丸々通い詰めて直談判に及んだ。しかし残念ながら、とにかく社長に会わせてくれという願いさえ叶わなかった。それも無理のないこと、ブースに詰めているのはただのバイトに過ぎず、彼らには何の権限もないのだ。
「ところがこっちにはそんな事情はわかりませんよね。だからデリリウムカフェを日本でやりたいんだってしつこいぐらいに言ったんだけれど、まったく相手にもされない。今考えれば相手がバイトだから当たり前なんですが、こっちは頭に血が上っちゃってそこまで考えが至らない。結局何の進展もなく、最後の夜はへこみまくってデリリウムカフェのカウンターで飲んでたんです」
と、まさにそのとき、ビールの神様が降臨する。
「カウンターに両肘ついて、がっくりうつむいて飲んでると誰か肩を叩く奴がいる。人がとことん落ち込んでるのに何だよって振り返ると、そいつが『日本でデリリウムカフェをやりたいというのはお前か』と聞くわけです」
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FMO第16弾【デリリウムカフェ】
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