「持たざる経営」がもてはやされた時代がありましたよね。1990年代後半のことです。極論をすると、自前で持つのはコアコンピタンスの部分だけで、その他の部分はアウトソーシングしたほうが低コストになる、外部環境の変化に適応できる!ということでした。
ある程度の販売量が安定的に見えていれば、大規模発注できますけど、そんな大規模な販売量が見えるなんてことがあるんでしょうか?
まあ、一言で言いますと、企業としての連続性が見えないんですよね。その企業の中を、スキルがきっちり上から下へとトランスファーされていく連続性が、持たざる経営だと見えない。
投資集団ならば、いいんですよ。お金出すからあなたたちやりなさい、と経営権を握ってやっていく。でも、ファンドで大きい集団は少ないですよね。皆さん、すぐにスピンアウトする。雨後のたけのこのように、あります。
同じことが、持たざる経営でも起こるでしょうね。何年かいて、プロデューサーとして実績を出してしまうと、すぐ辞めてしまう。自分で出来ればやめますな。
企業の連続性を担保するのは、たいてい人材です。
人を育てられない、スキルの連続性がない可能性が高い。つまり価値の源泉を複製が容易でない。
そして、人を引き止められない可能性が高い。つまり価値の源泉をリテンションできない可能性が高い。
そして、各ビジネスプロセスに対する情報の非対称性が大きくなる可能性も高い。
そんな経営を連続的にできるか?というと、けっこう厳しい、というのが正しい答えですね。
ここまではラインの部分のお話しをしています。
管理部門も同じようなことがいえますよね。
確かに、中規模の企業の管理部門/人事部門はひどいことが多いですよね。そこを壊す意味では、一度アウトソースしてもいいかもしれません。
ただ、人事は、会社のストラテジーを実現するための組織/人材のあり方を考える際にコアな部分を担いますので、もしその機能をアウトソースして、内部でのコントロール可能性が長期的に低くなると厳しいですよね。
ひたすらデメリットを列挙していますが、デメリットを列挙してやらない理由になるのか?というと、それだけでは、なりません。
あくまでメリットとデメリットの見合いで意思決定すべきことなので、デメリットがあるからといってやらないというのはおかしいですけど。
ただ、企業は社会の公器となるならば、「持続的競争優位」を目指すものです。
その持続性が「持たざる経営」には見えにくいんですよね。こういった課題を越えられる見込み、メドがあるなら、どうぞ推進してください。
もしそういう見込みがないのなら、敢えてやる必要があるのか?ということをもう一度、考えてみてください。
次回はビジネスプロセスの固定化VS人材の成長といったことを書いていこうと思いますので、お楽しみに。
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THOUGHT&INSIGHT株式会社 代表取締役
THOUGHT&INSIGHT株式会社、代表取締役。認定エグゼクティブコーチ。東京大学文学部卒。コンサルティング会社、専門商社、大学教員などを経て現職。