差別化という言葉はよく聞きます。ただ、いろいろな営業マンの方の提案書を見ていて、ある商圏で1位のシェアを持っている企業に対して、「差別化のために」といったことが書いてあるのを見かけて、「おや?」と思いました。
多少古い知見ですが、ある商圏で1位ならば、これまでのオーソドックスなやり方をしていれば充分儲かるので、わざわざ差別化する必要なんてないからです。
というか、その商圏で1位を獲得しているのですから、その企業のやり方がむしろスタンダードになっているものです。そのやり方を変えましょうという提案をしているのでしょうか?
経営学の世界では、いろいろな考え方がありますが、1位の企業が差別化施策を打つメリットはあまりありません。
競争戦略で有名なポーター教授は、1位の企業はコストリーダーシップ、つまり低価格化を仕掛ければ、2位、3位企業がついてこれなくなって苦しくなるので、市場をコントロールできる。その制御下に入らないために、下位の企業は差別化を強いられる、ということを言っていますよね。
(ポーター初期の知見だと思います。私は「競争優位の戦略」は論理矛盾が多いと思うので、ちょっと後期の知見にはついていけませんので、あくまで初期の知見です。)
今、一番であるというのは、それだけで競争優位を生み出すんですね。世間は巨象をアリが倒すようなお話しを好みますが、経営学の世界では、アリは巨象に一瞬で踏み潰されます。強い者は強いんです。
ちょっと話しは変わりますが、ランチェスター戦略はみなさんご存知だと思います。
「知ってるよ、弱者が強者に勝つ戦略でしょ?」とこの前クライアントさんに言われて、私はちょっと固まりました。
ランチェスターの考え方では、強い者が普通にやれば、強い者が勝ちます。
ただ、稀に弱者が勝ってしまうケースもありますよね。織田信長の桶狭間の戦いでは、圧倒的に不利だった織田軍は、奇跡的に今川軍を打ち破っています。
そういった弱者が勝ってしまう稀なケースの研究、弱者の戦い方もランチェスターではしているので、「弱者の戦略」との誤解が生まれているんですね。
弱者はどう戦うのか?は意外と皆さん知っているので、強者がもし、ランチェスターを使うとすると、どういう使い方になるでしょうか?ということを少し見てみましょう。
結論を先に言うと、自社がどの程度のシェアを取っているのか?を知った上で、下位企業とのどの程度の戦力差を保持し続ければいいのか?そのためのリソースの投下量は?ということを考えるために、ランチェスターの考え方を使うことができます。
例えば、戦闘能力が同じ兵士が5人対3人に分かれて、殺しあったとすると、どうなるか分かります?正解は5人のほうが1人の損害を出し、3人のほうが全滅するんです。戦力は数の二乗に比例するんですね。
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THOUGHT&INSIGHT株式会社 代表取締役
THOUGHT&INSIGHT株式会社、代表取締役。認定エグゼクティブコーチ。東京大学文学部卒。コンサルティング会社、専門商社、大学教員などを経て現職。