「持たざる経営」がもてはやされた時代がありましたよね。1990年代後半のことです。極論をすると、自前で持つのはコアコンピタンスの部分だけで、その他の部分はアウトソーシングしたほうが低コストになる、外部環境の変化に適応できる!ということでした。
バックオフィス部門はアウトソーシング。人事、経理、総務、情報システムなどの部門を全てアウトソーシングするんだ!という教えでした。
更に、商社は購買エージェントとして、顧客の購買業務の代行をしてあげることがコアバリューなんだ。購買をプロデュースするだけでいい。
生産設備を持つところを使えばいいんだ、と。
こういった考え方は、一時もてはやされました。ミスミの好業績、独自のビジネスモデルとあいまって、これからはアウトソーシングだ!と。
確かにアウトソーシングは一つの経営オプションです。リソースを自前でやるのか、外に求めるのか?というのは戦略的な意思決定事項ですよね。
でも、今、ミスミは持たざる経営をやっているかと言いますとやっていません。
人事部門も、人材開発室という形であります。
情報システムも自前で持っています。
なにより、駿河精機というメーカーと合併してしまって、今では生産設備まで持っているんです。
一体何があったのでしょうか?
2000年前後に、ミスミは赤字を出しまして、その後、コンサルタントとして有名な三枝氏が経営者に就任し、現在は5期連続で増収増益を続けています。
三枝氏が招かれると同時期に、当時の持たざる経営を推進してきた経営幹部は会社を去りましたよね。
上場した時の社長さんが株を持っているオーナー企業ともいえますので、オーナーさんが舵を切る判断をしたんですね。
でも、なぜ、持たざる経営から舵を切ったのか?
そして、舵を切ったからこそ増収増益を続けているのだろうか?それともたまたまだろうか?
というところは非常に興味深いことではありますね。
オーナーさんの意向は本人のみぞ知る、ということだと思うのですが、私が思う持たざる経営の問題点があります。
実は、持たざる経営の考え方を導入して、新しい事業を作り出そうといったプロジェクトに関わっていたことがありまして・・・。その時の知見を自分なりに書こうと思います。
まず、持たざる経営において、コアとなるコンピタンスはプロデュース力だ、という考え方があります。一人一人のビジネスプロデューサーが、内部、外部のリソースを駆使して事業を回していく。
で、内部には極力リソースを持たない。
一見、かっこいいんですよね。本当に。
でもね、いきなりビジネスプロデューサー的なことができるか?と言えば、できないですよね。そりゃ、経験を積んで、というのは当たり前ですよね。
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THOUGHT&INSIGHT株式会社 代表取締役
THOUGHT&INSIGHT株式会社、代表取締役。認定エグゼクティブコーチ。東京大学文学部卒。コンサルティング会社、専門商社、大学教員などを経て現職。