定量的な比較相対によってキャリアのよしあしを判じるとらえ方が、働くストレスをますます増大させる。
【Envisioning Career-scape 第2景 ?4】=======
前3回にわたって、
私が考えるキャリア形成における重要な3つのコンセプトのうちの
2つまでを述べてきました。
・『偶発の必然化』
・『イメージ・プルの力』
・『発色性』
今回は、最後3つめの『発色性』について書きます。
いつごろからか、
キャリアの「アップ/ダウン」
キャリアの「勝ち組/負け組」
などという表現が広がってきました。
私はこれらの表現にとても違和感を持っています。
例えば、実際のキャリア物語として、
高い年収を得られた金融の仕事から、
地方で就農したり、NPOの立ち上げに身を転じたりして
キャリアをリスタートさせる人たちがいます。
確かに年収ベースでいえば、大幅ダウンに違いないのですが、
これをキャリアダウンと安直には決めてかかれません。
メディアで紹介されるそうした人たちの声は
「辞めてよかった」、「人生が蘇った」というものです。
これはキャリアのアップ・ダウンを超えて、
人生革命の域にも達しています。
また、私はかつてマスコミ業界で働いていたので、
出版、テレビ、新聞、広告などの世界の就労実態がよくわかるのですが、
みかけの派手さ、自由なワークスタイルイメージ、高い年収など
そこで働くすべての人が「勝ち組キャリア」を謳歌しているように思われつつ、
その実、
過労やストレスで心身をボロボロにしている人や
スキルやセンスが鈍化して、職場で干されてしまう窓際中高年層、
ワークライフバランスを極端に欠いて、私生活を崩壊させている人
育児と両立できずにやむなく退職を決意する人、などなど
「勝ち組キャリア」とは世間で目されながら、
本当にそれが「勝ち」なのかと疑問に思える状況が多々あります。
だから私は、キャリアを「アップ/ダウン」「勝ち/負け」で語ることに
違和感があるわけです。
キャリア形成における選択は、「納得」か「妥協」かです。
言い換えれば、自分らしいかそうでないかです。
そしてそれは、色の違いにたとえるのがいいと思います。
色の世界では、青と赤を比べて、青が上だとか、赤が下だとかの比較はしません。
色は比較相対によって優劣高低を判別するものではないからです。
仕事をAからBに変えることは、
仕事を青から赤に変えることに似ています。
本人が、赤のほうの仕事を納得して選んだのであれば、
それは立派なキャリアチェンジだと思うのです。
ただ、色には「いい青だね」とか「ちょっと赤がくすんでるね」などいうように、
色合いというか発色度合いの違いはあります。
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【2景】キャリアの要諦
2007.06.09
2007.06.01
2007.05.15
2007.05.07
キャリア・ポートレート コンサルティング 代表
人財教育コンサルタント・概念工作家。 『プロフェッショナルシップ研修』(一個のプロとしての意識基盤をつくる教育プログラム)はじめ「コンセプチュアル思考研修」、管理職研修、キャリア開発研修などのジャンルで企業内研修を行なう。「働くこと・仕事」の本質をつかむ哲学的なアプローチを志向している。