タテへの深化/高化と、ヨコへの変化/変容がキャリア形成の本質的な2要素であるように思える。
【Envisioning Career-scape 第2景 ?2】===
キャリア形成の理論に関しては、先達の研究者たちが
いろいろな視点から説明してくれています。
必ずしも二項対立という図式ではないのですが、
1つには、シャインの「キャリア・アンカー理論」のように
どちらかというと固定性・深掘り性に視点を置いたものと、
他の1つには、
前回紹介したクランボルツの「プランド・ハプンスタンス理論」のように、
流動性・変化対応性に視点を置いたものの
2つの軸があるように思われます。
これは、私たち個人がどうキャリアをつくっていっているかを振り返れば、
当然かもしれません。
つまり、私たちは各々、
特定の専門分野、シャインの言葉でいう(アンカー:anchor:船のいかり)を持って
それを深掘りし、ふくらませながらキャリアをつくるのと同時に、
他方でさまざまに出くわす状況に対応しながら、
みずからを変化・変容させていかねば、キャリアが行き詰ってしまう。
要は、タテへの深化/高化と
ヨコへの柔軟的な変化対応(「トランジション」と呼ぶ)の両方が
キャリア形成の基本要素だからです。
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さて、キャリア形成に関わる他の理論を紹介しますと、
神戸大学院の金井壽宏教授は、
「節目」と「ドリフト」というキーワードを使います。
キャリアは四六時中考えていなければならないものではなく、
節目節目で、しっかりデザインすればよろしい、
あとは、流れにまかせてドリフトでいいんだ、という論です。
確かに、私自身を含め多くの人のキャリアを観察すると、
大小さまざまな節目の転換点とドリフト時期が
交互に組み合わさっている感じです。
また、リクルート ワークス研究所の大久保幸夫所長は、
「筏下り・山登り」モデルを提唱しています。
新社会人から30代半ばまでは、
無我夢中で急流を下り、
自分がどこへ向かっているかもわからない筏下りのような状態がまずあり、
いくつも難所を乗り越えることにより基礎力をつけることができる。
そして30代後半からは、
自分を見つめて登る山を決め、
専門力を持って、いざ登山を開始せよというものです。
これは、キャリアの初期を筏下り、中期以降を山登りとしたところが
非常に現実感のメタファーで納得感ある論です。
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さて、私がキャリア形成を語る上でモデルとするのは、
登山とトレッキングです。
登山の場合、目的はただ1つ「登頂」であり、
その結果を得るためにあらゆる努力をしていく。
頂を目指す途中、道草はしない。
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【2景】キャリアの要諦
2007.06.09
2007.06.01
2007.05.15
2007.05.07
キャリア・ポートレート コンサルティング 代表
人財教育コンサルタント・概念工作家。 『プロフェッショナルシップ研修』(一個のプロとしての意識基盤をつくる教育プログラム)はじめ「コンセプチュアル思考研修」、管理職研修、キャリア開発研修などのジャンルで企業内研修を行なう。「働くこと・仕事」の本質をつかむ哲学的なアプローチを志向している。