北米生徒数目下25万人。300万人への拡張も夢ではないといわれる教育系フランチャイズの雄、KUMON(公文)。競合他社の追随を許さないその強さの秘密に迫ってみた。
「顧客として、移民の子供をひきつけるためにはどうしたらいいか?」
これを出発点として、KUMONでは、「移民に焦点を定めて、フランチャイジーを開拓しよう!」という考えに至ったようです。
では、移民をフランチャイジーとしてリクルートするには、どうしたらいいか?
そう考えて、北米KUMONでは、手頃な初期投資と、「お金」より「資格」と「適性」を問う選抜システム、そして、手の行き届いたトレーニング・プログラムに基づく、フランチャイズの仕組みを打ちたてました。
例えば、手頃な初期投資。これがどのくらい手頃かというと、他の教育系フランチャイズ・ビジネスと比較してみるとわかりやすいと思います。
アメリカに、「シルバン・ラーニング・センター」というフランチャイズがあります。
KUMONと同じく、算数と読み書きを中心とした、チュータリング(個別指導)を提供しているフランチャイズですが、シルバンの場合、初期投資の推定額は18万ドルから30万ドルの間だといわれています。これがKUMONの場合、1万ドルから3万ドル。なんと10分の1の投資で起業できてしまうというのです。
昨今、どの業界でも、独立/個人経営のビジネスが大手に対抗し生き延びていくことは年々困難になってきています。そういった現状の中で、フランチャイズ・ビジネスという仕組みが、個人が独立、起業する上で勝算の高い方法としてますます注目を浴びてきています。その人気を受けてフランチャイズ・ビジネスの初期投資額も上昇傾向にあるようです。最近私もフランチャイズ関連の見本市に参加する機会がありましたが、初期投資額が20万ドルから50万ドルというのは当たり前になってきています。そこへきて、KUMONの1万ドルから3万ドルというのは、フランチャイズ・ビジネスを検討している人にとっては破格です。
また、KUMONでは、「資格」と「適性」に重きをおいた、厳格な選抜システムを設けて、やる気のある質の良いフランチャイジーの獲得に注力しています。さらに、営業開始前のトレーニング・プログラム、そして継続的なスキルアップのためのトレーニング・プログラムを設けて、フランチャイジーのサポートにも努めています。KUMONのフランチャイジー候補は、厳重な身元調査をクリアした後に面接試験、筆記試験を受け、イリノイ州にあるトレーニング・センターで7日間のトレーニング、実技試験をパスしなくてはなりません。「お金さえあれば誰でもなれる」というわけではないのです。もとより、KUMONのフランチャイジーになるためには、四年制大学の学士号をもっていることが条件になっていますが、KUMONのフランチャイジーの多くが、教員免許の保持者や、エンジニア(フランチャイジーの10%がエンジニア出身)であることも、この厳格な選抜システムに起因しているのかもしれません。
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仕組み
2009.12.01
2009.10.06
2008.05.01
ダイナ・サーチ、インク 代表
ダイナ・サーチ、インク代表 https://www.dyna-search.com/jp/ 一般社団法人コア・バリュー経営協会理事 https://www.corevalue.or.jp/ 南カリフォルニア大学オペレーション・リサーチ学科修士課程修了。米国企業で経験を積んだのち、1982年に日米間のビジネス・コンサルティング会社、ダイナ・サーチ(Dyna-Search, Inc.)をカリフォルニア州ロサンゼルスに設立。米優良企業の研究を通し、日本企業の革新を支援してきた。アメリカのネット通販会社ザッポスや、規模ではなく偉大さを追求する中小企業群スモール・ジャイアンツなどの研究を踏まえ、生活者主体の時代に対応する経営革新手法として「コア・バリュー経営」を提唱。2009年以来、社員も顧客もハッピーで、生産性の高い会社を目指す志の高い経営者を対象に、コンサルティング・執筆・講演・リーダーシップ教育活動を精力的に行っている。主な著書に、『コア・バリュー・リーダーシップ』(PHPエディターズ・グループ)、『アメリカで「小さいのに偉大だ!」といわれる企業のシンプルで強い戦略』(PHP研究所)、『ザッポスの奇跡 改訂版 ~アマゾンが屈した史上最強の新経営戦略~』(廣済堂出版)、『未来企業は共に夢を見る ―コア・バリュー経営―』(東京図書出版)などがある。