スタバをはじめチェーン店に市場を奪われてきた独立系コーヒーショップ。「個」のサービスと、「地域性」に照準を合わせた店づくりに、リテーリングの未来を見た・・・。
アメリカのコーヒーショップ市場は110億ドル規模といわれ、過去5年で1.5倍を超える成長を遂げてきた。コーヒー・チェーンの先駆けであるスターバックスが、ラテやモカなどの「プレミアム・コーヒー」にアメリカ人を目覚めさせ、コーヒーショップ市場の需要を押し上げてきたわけだが、その一方で、昔ながらの個人経営店を圧迫し、淘汰へと追い込んできたことも事実だ。
2001年に約62%あった独立系シェアは、年々縮小の一途を辿っている。店舗あたりの売上規模で比べてみても、スタバと独立系とでは天と地の差だ。スタバの店舗が年間1億円相当を売り上げるのに対し、独立系は2,000万円程度であると、某米リサーチ会社は報じる。
今年の5月、『スタバいじめ』の記事に書いたが、不況や過剰な店舗展開によるブランドの破壊など、諸々の理由でスタバが伸び悩むのを尻目に、マクドナルドやダンキン・ドーナツなど、かつてプレミアム・コーヒーとは縁遠い存在だった大手プレイヤーたちがこの市場に参入し、スタバのシェアを削り取ると共に、独立系の立場をますます苦しいものにしている。そんな中で、つい最近、ロサンゼルスの街角で見つけたあるコーヒーショップに独立系の未来を見た。
シカゴを本拠地に、米国内で8店舗を展開するインテリゲンツィア・コーヒー・アンド・ティーは、「本物」を追い求めるコーヒー好きをターゲットとした独立系チェーンである。同カフェが、ボヘミアン気質と個性的なショップで知られるビーチ沿いのアートの街、アボット・キニー通りにオープンした店舗は、「個」のサービス、「エクスペリエンス(感動体験)」、「コミュニティ」をキーワードとした斬新な実験的店舗なのだ。
店に足を踏み入れ、「ここでお待ちください」の表示の前で立ち止まると、バリスタの挨拶に迎えられる。普通のコーヒーショップだったら、その場で注文を取り、コーヒーをいれるところだろうが、インテリゲンツィア・コーヒー・アンド・ティーでは、「さあ、こちらへ」と、各バリスタが受け持つ、個別カウンターへと誘導される。
つまり、各バリスタが、一人ひとりの顧客と向き合い、「個」のサービスを提供するという仕組みになっているのだ。まるで、ワインバーのソムリエさながらに、顧客の好みに耳を傾け、お勧めのフレーバーを選んでくれる。アイス・ラテなど冷たいドリンクをつくる、バーテンダー顔負けのシェーカーさばきも見ていて楽しい。
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仕組み
2009.12.01
2009.10.06
2008.05.01
ダイナ・サーチ、インク 代表
ダイナ・サーチ、インク代表 https://www.dyna-search.com/jp/ 一般社団法人コア・バリュー経営協会理事 https://www.corevalue.or.jp/ 南カリフォルニア大学オペレーション・リサーチ学科修士課程修了。米国企業で経験を積んだのち、1982年に日米間のビジネス・コンサルティング会社、ダイナ・サーチ(Dyna-Search, Inc.)をカリフォルニア州ロサンゼルスに設立。米優良企業の研究を通し、日本企業の革新を支援してきた。アメリカのネット通販会社ザッポスや、規模ではなく偉大さを追求する中小企業群スモール・ジャイアンツなどの研究を踏まえ、生活者主体の時代に対応する経営革新手法として「コア・バリュー経営」を提唱。2009年以来、社員も顧客もハッピーで、生産性の高い会社を目指す志の高い経営者を対象に、コンサルティング・執筆・講演・リーダーシップ教育活動を精力的に行っている。主な著書に、『コア・バリュー・リーダーシップ』(PHPエディターズ・グループ)、『アメリカで「小さいのに偉大だ!」といわれる企業のシンプルで強い戦略』(PHP研究所)、『ザッポスの奇跡 改訂版 ~アマゾンが屈した史上最強の新経営戦略~』(廣済堂出版)、『未来企業は共に夢を見る ―コア・バリュー経営―』(東京図書出版)などがある。