テレビの凋落:なれあいのなれの果て

2025.04.14

ライフ・ソーシャル

テレビの凋落:なれあいのなれの果て

純丘曜彰 教授博士
大阪芸術大学 哲学教授

/カネを払ったスポンサーではなく、また、視聴者のニーズでもなく、広告代理店やテレビ局が放送を私物化して、恣意的に人材や企画の露出度を強引に引き上げ、人気を捏造するようになった。つまり、起用して露出させているから、人気が出た、数字が集まったにすぎない。こんなものに乗せられるのは、いまだにネットもまともに使えない情報弱者だけ。/

ようするに、マーケティングの需要原則どころか、自分たちで決めた自主規定すら、マスコミが守っていない。結果、視聴者離れ。まあ、当然の帰結。たしかに1960年代には、当たり前田のクラッカー、とか、鉄人28号のOPでグリコを連呼するとか、番組内にスポンサーが割り込んでいるのがふつうだった。しかし、それがあまりにひどくなったので、こういう規定ができた。ところが、1972年のネスカフェゴールドブレンドの遠藤周作のCMあたりからだろうか、商品を売っているのか、タレントを売っているのかわからない広告が出てきて、商品や内容より、映画俳優に代わるテレビのタレントやアナウンサー、キャスターを売り出すCMや番組が横行。テレビ局自体が事業部を立ち上げ、イベントから不動産まで手広くビジネスを展開して、これを番組内で宣伝。つまり、カネを払ったスポンサーではなく、また、視聴者のニーズでもなく、広告代理店やテレビ局が放送を私物化して、恣意的に人材や企画の露出度を強引に引き上げ、人気を捏造するようになった。

つまり、人気がある、数字を持っているから、CMや番組に起用しているのではなく、起用して露出させているから、人気が出た、数字が集まったにすぎない。その露出のハシゴをはずせば、そんな人、いたっけ、そんな話、あったっけ、となってしまう程度の薄いインスタントコーヒーのような人工タレント、人工イベント。捏造された人気の商品、人気の店。そんな連中が、そんな話題で、わいわいがやがややっていて、いったいだれがシラフでそんなものを見たがるだろうか。

まあ、ネットその他の代替メディアがいくらでもある時代、そういう捏造の神通力も、もはやネットもまともに使えない情報弱者の連中にしか通用するまい。日本野球のファンなんて、その典型。一山いくらの束売りアイドルのファンとか、中坊が書いたようなクリシエだらけの無料連ドラで泣いたり笑ったりできる方々とか、いいカモだ。ただ問題は、こういう時代遅れの情報弱者たちは、その閉鎖的洗脳によって激烈テロ教団と同様の神がかった結束力があって、自分たちの批判者に激烈に攻撃的であること。それが、局内にまで大量に巣くっていて、変革なんか絶対に許さない。

かつて日枝あたりがやったのが、出たい人より見たい人、というマーケティング主導の番組編成。それがどうしてこうなった? バカは死ななきゃ治らない、なんて言うが、いまや出演者や取材対象との利害関係者が幹部から手下まで局内でポジションを得てしまっている以上、かれら全員を一掃排除して、生まれ変わることなどできまい。宗教的社会主義国家ソ連のように、テレビも、いっぺん潰れないと、もはやどうにもならないのかもしれない。いや、そもそも、いまどき電気のムダそのものの強力電波を国内隅々まで垂れ流し、だれも見ていない、つけさえもしないテレビを復活させる意味なんか、もはや弱電ラジオほどにも無いのかもしれない。


純丘曜彰(すみおかてるあき)大阪芸術大学教授(哲学)/美術博士(東京藝術大学)、東京大学卒(インター&文学部哲学科)、元ドイツマインツ大学客員教授(メディア学)、元東海大学総合経営学部准教授、元テレビ朝日報道局ブレーン。

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純丘曜彰 教授博士

大阪芸術大学 哲学教授

美術博士(東京藝大)、文学修士(東大)。東大卒。テレビ朝日ブレーン として『朝まで生テレビ!』を立ち上げ、東海大学総合経営学部准教授、グーテンベルク大学メディア学部客員教授などを経て現職。

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