「健康な高齢化の10年」を見据えた、日本の課題。

2024.08.02

ライフ・ソーシャル

「健康な高齢化の10年」を見据えた、日本の課題。

川口 雅裕
NPO法人・老いの工学研究所 理事長

世界的な高齢化について、世界保健機関(WHO)が提唱した「4つの行動計画」から考えてみる。

また、総合的なケアサービスという面では、日本では「何でも診てくれる、相談できる医師・クリニック」というのは多くないのが現状です。だから、具合が悪くなったら「どこの病院に行こうか」と考えてしまいますし、行ってみたら「専門ではないから」と言ってちゃんとした診断や治療が受けられないこともよくあります。「かかりつけ医」も名称だけは浸透しましたが、実態は全く伴っていません。この点も重要な課題です。


●皆が「当事者」として考えよう。

そして4つ目は、「必要な高齢者に介護サービスを提供する」こと。これについては、日本は2000年に介護保険制度ができ、既に20年以上がたってその利用も進んでいますから、ある程度はクリアできているといえそうです。「親の面倒は、子どもやその配偶者が最後まで見なければならない」という価値観が色濃く残っていた時代には、多くの人が仕事などを犠牲に親の介護をしてきたわけですが、その頃とはかなり違ってきています。

もちろん、介護保険の財源不足、給付と負担のバランス、被保険者と受給者の範囲の見直し、給付内容や水準の見直し、介護現場における職員の人材不足や処遇改善、ロボットやITの活用など検討課題はたくさんありますが、介護保険制度が、高齢化が進む中で広く安心感を提供しているとはいえるでしょう。

日本は高齢化の先頭を走る国ですが、「健康な高齢化の10年」における4つの行動計画に照らせば、まだまだ課題は多くあることが分かります。誰しもいつか高齢者になるわけですから、これらの課題は全員が当事者として考えてみる必要があるでしょう。また、ここで見てきた課題の解決はノウハウ・仕組み・技術となり、これから高齢化率が高まってくる国々に輸出可能なビジネスとしても期待できるはずです。


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川口 雅裕

NPO法人・老いの工学研究所 理事長

高齢期の心身の健康や幸福感に関する研究者。暮らす環境や生活スタイルに焦点を当て、単なる体の健康だけでなく、暮らし全体、人生全体という広い視野から、ポジティブになれるたくさんのエビデンスとともに、高齢者にエールを送る講演を行っています。

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