NPO法人「老いの工学研究所」の協調的幸福に関する調査結果から。
そう考えると、近所の人たちに対してポジティブな感情を持っている人ほど、健康の実感や幸福感が高いというのも合点がいきます。つまり、近くに住んでいる人たちに対する信頼感や親しみがあるので、人とのつながりを維持し、交流の機会も多く持てます。これによって自然な形で(努力しなくても)、運動や食事を含めたよい生活習慣が実現し、衰えを防ぐことになります。近くにいる人たちとのつながりが、フレイルの入り口に立ってしまうことを、未然に防いでいるということです。
●「つながり」は、立派な健康法。
この視点で、現在の高齢者の暮らす環境を見てみると、決してよいとはいえません。郊外や田舎に行けば、多くのところで昔にあったような地域コミュニティーが失われてしまっていますし、人をほとんど見かけない場所もあります。近くに住んでいる人たちへの信頼感や親しみは昔に比べれば、大きく低下しているのは間違いないでしょう。
かといって、人が多くいればいいかというとそうでもありません。最近、駅に近いマンションに住み替える高齢者が増えましたが、住人同士の関係が分断されていて、隣に誰が住んでいるか分からない、すれ違ってもあいさつもしないようなマンションなら、人とほとんど会わない田舎と実質的には同じです。
こう書くと、「年を取ったら面倒な人間関係は持ちたくない」という声が必ず聞こえてくるのですが、筆者は別に「嫌な人とも付き合おう」「皆で一緒に群れるように交流しよう」と言っているのではありません。どのように関わろうが本人の自由で構いませんが、心身ともに健やかな高齢期をつくるには、周りに人がいて、その人たちに肯定的な感情を持ち、互いに自然な距離で関係を維持しているという状態でいることが重要であると述べたいだけです。心身共に健やかな高齢期を実現したいのであれば、“つながりは、最高の健康法”。そう言って差し支えないと、筆者は思っています。
高齢社会
2024.03.06
2024.04.15
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2024.11.06
NPO法人・老いの工学研究所 理事長
高齢期の心身の健康や幸福感に関する研究者。暮らす環境や生活スタイルに焦点を当て、単なる体の健康だけでなく、暮らし全体、人生全体という広い視野から、ポジティブになれるたくさんのエビデンスとともに、高齢者にエールを送る講演を行っています。