「ピンピンコロリ」は、既にほぼ実現している。

2024.03.06

ライフ・ソーシャル

「ピンピンコロリ」は、既にほぼ実現している。

川口 雅裕
NPO法人・老いの工学研究所 理事長

「ピンピンコロリ」の定義って何?

平均自立期間の算出にあたっては、健常~要介護1までを「自立期間」、要介護2~5までを「介護期間(非自立期間)」とします。筆者はこれに準じて、「『ピンピン』とは、自立した暮らしを意味し、健常~要介護1までの人のことをいう」と定義すればとても分かりやすいと思います。こうすれば、高齢者の方の認識とも一致しています。考慮が必要だとすれば、治療不可能な終末期に必要となる介護をどう考えるかですが、そんなに長期に渡るわけではないので、その前の状態で考えればいいというのが本人および家族の認識でしょう。筆者の父親も最期はホスピスで1カ月ほどを過ごしましたが、ピンピンコロリだったと思っています。

●「ピンピンコロリ」は、ほぼ実現している。
健常~要介護1までを「自立期間=ピンピンした状態」だとすると、その割合は、80歳代前半で約88%、80歳代後半で約77%、90歳以上で54%となっています(厚生労働省「介護保険事業報告」から筆者算出)。

65歳の人の平均余命は、男性で19.85年(約85歳)、女性で24.73年(約90歳)です。従って、ピンピンコロリの確率(健常~要介護1までで亡くなる可能性)は、7~8割はあるということになります。90歳を超えても、ピンピンコロリは5割くらいの確率で実現するということです。

ホスピス財団が行った「ホスピス・緩和ケアに関する意識調査2023年」で、理想の死に方について聞いています。それは、2択になっています。「ある日、心臓病などで突然死ぬ」か「(寝込んでもいいので)病気などで徐々に弱って死ぬ」の、どちらかを選ぶ方式です。

つまり、「急死」か「寝たきり」かという究極の2択。そう聞かれれば、寝たきりを嫌がる人が多いに決まっています。実際、70代は、76.7%が「急死」を選びました。しかし、現代では医療の発達などで、急死はなかなか難しいもの。このような調査結果をもって、「ピンピンコロリを望む人が多いが、(急死という意味の)ピンピンコロリはなかなか難しい」とするのはあまりに強引でしょう。

多くの高齢者が望んでいるピンピンコロリとは、無病からの急死ではなく、「終末期の直前まで、要介護1くらいまでで自立生活ができていること」です。そう考えれば、実は、もう既にピンピンコロリはおおむね実現しているといっても過言ではないのです。

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川口 雅裕

NPO法人・老いの工学研究所 理事長

高齢期の心身の健康や幸福感に関する研究者。暮らす環境や生活スタイルに焦点を当て、単なる体の健康だけでなく、暮らし全体、人生全体という広い視野から、ポジティブになれるたくさんのエビデンスとともに、高齢者にエールを送る講演を行っています。

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