前回の「残念なDXからいかに抜け出すか DXにはマーケティングが欠落している?」(https://www.insightnow.jp/article/11890) 第1回は、日本企業のDXに存在する「残念なDX」現象をテーマに、顧客志向が弱いこと、そもそも成功なのか失敗なのか明確でないという話をしました。今回はDXの誤解と失敗の原因について、さらに一歩進んだ話をしたいと思います。
次に、「プロジェクトの目的に対する認識の違い」です。経営層はコスト削減と効率化を最優先の目標と考えていたのに、現場従業員は作業の質や安全性を重視しています。また新システムの導入による作業内容の変化について、深い理解や動機づけするだけの情報提供やトレーニングが十分に行われているとは言えせん。プロジェクトの目的と戦略を含めて認識を合わせる必要があります。
失敗に至るプロセスで、事例では「プロジェクトの遂行困難」が起きました。現場の従業員が新システムの導入に対して抵抗感を持ち、十分な協力が得られません。これは先ほどの文化の話も関係していて、新しいシステムを導入すれば成果が出るといっても、導入すること自体がなかなか難しいです。「期待された成果の未達成」もあり、生産効率の向上に必要なデータ分析の活用が十分に行われず、目標の20%向上は達成できませんでした。
結果として、「追加コストの発生」となりました。従業員のトレーニングやシステム調整に追加の時間とコストが必要となり、プロジェクト全体のコストが予算を超過してしまいました。
この具体例から、DXプロジェクトの成功には、プロジェクト開始前に経営層と現場従業員間で共通の理解と目標を確立することの重要性が明らかになります。全員がプロジェクトの目的、期待される成果、各自の役割と責任について同じ認識を持つことが、DXの成功に不可欠です。
金森 ただ、新しいことするとだいたい「抵抗勢力」の反撃があるので、そういった点への配慮や対策も必要になりますよね。それはDXに限らず、既存の「業務改善」のプロジェクトでも同じですが、DXは経営層から現場まで全てを巻き込むので、よりそうした動きも出やすくなるため配慮が必要になるところです。
DXをもっと自由に大きく考える
猪口 これまでの話と矛盾するかもしれませんが、僕は今の経営者層にDXを求めるのは酷な気もします。DXは、本当はもっと自由にあっていいものではないでしょうか。
富士 例えば高度成長期やバブルの頃と比較して、システム化などにより業務内容はものすごく効率化されています、ところが効率化がそのまま勤務時間短縮になったわけではありません、システム化により業務の密度が濃くなって求められる質は高くなり、メンタル的にはキツくなっていたりします、また新たに個人情報やセキュリティ、コンプライアンスなど考えなければいけないことがかなり増えていると言えるでしょう。
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残念なDX
2024.01.31
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