前回の「残念なDXからいかに抜け出すか DXにはマーケティングが欠落している?」(https://www.insightnow.jp/article/11890) 第1回は、日本企業のDXに存在する「残念なDX」現象をテーマに、顧客志向が弱いこと、そもそも成功なのか失敗なのか明確でないという話をしました。今回はDXの誤解と失敗の原因について、さらに一歩進んだ話をしたいと思います。
3つ目は「自動化と人工知能(AI)」です。プロセスの自動化、AIや機械学習の導入により、作業の効率化、精度の向上、コスト削減を図ります。これも必須ではありませんが、AIを使うからこそできることがたくさんあります。ただし、AIを使えばDXという雰囲気になりがちですが、それはそれできちんと考えて、必要なければ使わないことも大事です。
次に、「デジタル製品とサービスの開発」です。従来の製品やサービスをデジタル化し、オンラインでのアクセスや新たな顧客体験を提供します。
そしてここまでの延長上にあるのが、「顧客体験のデジタル化」です。これは、ウェブサイト、モバイルアプリ、ソーシャルメディアなどを通じて、顧客とのインタラクションをデジタル化し、顧客満足度を向上させます。今までリアルなお店に来る人のデータはほとんど取れませんでしたが、デジタルを使うことによってより高度なことができるようになります。そもそも顧客体験自体が抜けているので、そこに警鐘を鳴らすという意味でも大事です。
最後が「リモートワークとデジタルコラボレーション」です。リモートワークを支援するためのデジタルツールを導入し、チーム間のコラボレーションを促進します。リモートワークを実現しようという気持ちがなければ、仕事の仕方オフィスの見直しや紙書類の廃止まで進んでいかないので、常にこの2つをセットで考えていくことが必要です。これは働き方改革までかかってくるところだと思います。
猪口 コラボレーションは必須ですね。一人でできるものではありません。
富士 今回の一番の問題提起は、初期段階での共通認識の不足がプロジェクトにおいて大きな問題だということです。そこで、スタートでボタンの掛け違いをしたままでDXが進むと残念なDXになるのではないかという仮説のもとに、「製造業におけるDXプロジェクトという具体例」を使って、共通認識として不足していることをいくつか挙げてみます。状況は、ある製造業の企業が、生産プロセスの効率化と品質向上を目的としてDXプロジェクトを開始。プロジェクトの目標は、生産ラインの自動化とデータ分析の強化を通じて、生産効率を20%向上させることです。
共通認識の不足の1番目は、「経営層と現場の間のギャップ」です。経営層は技術的な側面に焦点を当て、生産ラインの自動化とデータ分析ツールの導入に注力する一方で、現場の従業員は、新しいシステムへの適応や操作方法に関する不安を抱えています。特に製造業はこのギャップが非常に明確です、また製造業は今構造改革に合わせてリスキリングを進めています。リスキリングをするということは相当業務や組織が変える場合がほとんどですが、現場社員の気持ちが追いつかずに、「何で私たちがこんなデジタル対応をやらなきゃいけないの?」ということになってしまうのです。
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残念なDX
2024.01.31
2024.01.31
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