成田某の発言に思うこと。
高齢者の交通事故の問題もよく話題に上りますが、交通事故は高齢者に多いわけではありません。警察庁の「令和3年中の交通事故の発生状況」を見ると、免許保有者10万人当たりの交通事故件数は、75~79歳で390.7件となっており、25~29歳の424.9件を1割下回っています。80~84歳で429.8件、85歳以上で524.4件と増えますが、それでも20~24歳の605.7件よりは少なくなっています。
また、年次推移でみると、免許保有者10万人当たりの事故件数は、2011年に80歳以上で約1000件であったものが、年々減少して、2021年には429.8件(80~84歳)、524.4件(85歳以上)となっています。10年程度で交通事故を半数まで減らした高齢者の姿勢は、評価されるべきだろうと思います。
そして、スポーツ庁は「体力・運動能力調査(平成30年度)」を受け、高齢者(65~79歳)の体力・運動能力について「握力」「上体起こし」「開眼片足立ち」「6分間歩行」など、ほとんどの項目で上昇傾向にあるとしています。具体的には、「開眼片足立ち」で立っていられる時間は、75歳女性で平成10年の約35秒から、平成30年には約60秒まで伸びました。「6分間歩行」も同様に、約480メートル(平成10年)から約540メートル(平成30年)となっています。
青少年(6~19歳)ではやや低下傾向、成人(20~64歳)ではおおむね横ばいとなっている中、高齢者の体力だけが右肩上がりになっているのは、さまざまな要因があるでしょうが、現役世代の世話にならず、自立生活を継続していこうという意欲の表れだと考えます。
その結果、日常的にサポートが必要になる「要介護2」以上の人の割合は、80代後半で23%に過ぎません。90歳を超えても、その割合は46%です。(介護保険事業報告から筆者計算)。これは、80代後半で4人に3人、90歳超で約半数が自立生活をしているということであり、その自助努力は評価に値すると思います。
もちろん、“老害”としか言いようのないケースも見聞きしますが、それは一部の人であって、高齢者全体に当てはめるのは適切ではありません。ごく一部の若者の犯罪や非行を取り上げて「今どきの若い者は…」というのがおかしいのと同じことです。
先述したように、高齢者を「支えられる側」に閉じ込めてしまった経緯を反省、改善すべきです。また、高齢者の実態を正確に把握できていないという問題もあり、高齢者が行っている努力は評価しなければなりません。それでも高齢者を一方的に責めるのであれば、それは「いつか自分も高齢者になる」という当たり前の自覚が欠けているのだと思います。
高齢社会
2022.12.14
2023.01.16
2023.01.26
2023.02.07
2023.03.08
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2023.05.24
2023.06.28
2023.07.11
NPO法人・老いの工学研究所 理事長
高齢期の心身の健康や幸福感に関する研究者。暮らす環境や生活スタイルに焦点を当て、単なる体の健康だけでなく、暮らし全体、人生全体という広い視野から、ポジティブになれるたくさんのエビデンスとともに、高齢者にエールを送る講演を行っています。