「全身企画屋」と自らを語り、現在は福岡の地で活躍される中村さん。いまでも多数の企業の顧問を務め、変幻自在な仕事っぷりとそのスタイルは、あらゆるナレッジワーカーが参考になるはずです。 インサイトナウをはじめ、アウトプットを出し続ける中村さんにお話しを伺いました。(聞き手:猪口真)
ただし、東京と福岡でこれには大きな違いがあると思います。広告やマーケティングの2,000〜3,000万円のプロジェクトでプレゼンに行くと、東京だと担当者レベルかせいぜい部長、執行役員クラスまででしょう。一方、福岡は中小企業が多く、直接社長が話を聞きたいと言って出てくるので、社長と直接話すことになります。
会社を経営していて思うのは、そのとき、会社から来ている人と個人で会社をやっている人では背負っているものが違うため、印象も全然違うということです。代理店という企業を背負っているのか、個人で全てを背負って喋っているのか、優秀な社長が見たら、その覚悟の違いはわかります。そういう意味で言うと、早めに独立して社長と対面で喋れる、経営者と雑談できるような大人にならなかったら、30年、40年食えないですよね。
猪口 それは仕事と人生で共通した話ですね。
中村 公私混同していかなかったら食えないと思いますよ。「公」のノウハウだけではおそらく飯は食えません。会社の社長は公私混同しているので、こっちも公私混同でつけ入るような人間力を持たなかったら、永くはお付き合いできません。BtoBの基本として、特にマーケティングやクリエイティブでは、社長と対面で喋り、互いを磨ける技量がないと無理だと思います。
猪口 それは定年後の人生にも大きく影響しそうですね。看板だけだとしたら、それを取った人間は何もないですよね。
中村 早目に苦労しろとは言いませんが、早めにいろいろな経験を積んでおくと、40代50代になってトレンドが変わってきます。20代30代のうちにそういった経験をどれだけしておくかが大事で、会社に守られていたらそれができません。
猪口 東京で僕が感じるのは、本当は社長に直で行きたいのだけど、ビジネスの仕組みが複雑に絡みすぎて、そこを縫っていかないと到達しません。
中村 私も東京でも仕事しましたけど、溺れてしまって、自分が何をやっているのかわかりませんでした。有名なブランドの仕事をさせてもらいましたが、取締役にすら会えなかったですね。担当レベルで挟まれながら苦労しても、結局自分にどういう成果があったのかわかりませんでした。
40歳を過ぎてからは、プレゼンの仕事は社長に会えなければ受けないというスタンスを取れるようになりました。そうすると話が早く、仕事になる率も高くなります。そこの違いは本当に大きいですね。
地方にいると、「近くにいる」ということが一番のメリットになります。「今酒飲んでんだけど、ちょっと来ない?」と呼ばれて行く。それで会って喋る。東京は別だと思いますが、地方で専門職で生きるためには、この物理的時間と物理的距離が一番のメリットです。偉そうなことを言うのではなくて、親身になって相談に乗るだけです。その時に会社の看板を背負っているのではなく、個人名でちゃんと相談に乗るということを続けていたら、今や顧問先が20社近くになりました。
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インサイトナウ編集長対談
2023.03.24