「家電ライフスタイルプロデューサー」として、YouTubeも始めて、活動の場を広げてきた神原サリーさん、そして「サービス」をサイエンスと捉え、サービスを事業のコアとして推進すべきだと提唱する松井拓己さん。このお二人で、これからの時代、モノや情報の提供側として、サービスをどのようにとらえ、顧客に提供していけばいいのかを語り合っていただきました。
神原 家事はやれて当たり前で、感謝されない。だからこそ、例えばワンオペ育児のような言葉もあって、みんな「私だけが」という思いがある。意識を変えていこうとするものの、本当にできているかといったらまだまだです。モチベーションが上がるようなサービス設計にするためには、具体的にはどのようなことをするのですか。
松井 一つは可視化です。知らないうちに装置がメンテナンスされ、トラブルが解消されていつも通り動く状態は、何も説明されないと当たり前になってしまいます。しかし、危険の余地があって、今週ここをこういうふうにメンテナンスしたので、こんな重大なトラブルを回避しておきましたと言われたら、「ナイス!」という話になります。
おそらく家事も一緒で、よく「名もなき家事」と言われたりしますよね。例えば子どもを風呂に入れるなら、服を脱がせて、それを洗濯機に入れて、出した後に体を拭いて、オイルを塗ってやってということが男性はわからないので、子どもを洗って出したら、もう風呂に入れた気分になって、やってやったぞという感じになる。その前後のプロセスが可視化されれば、全然できていないことがわかって、いつもやってくれてありがとうという気持ちになります。そのようにサービスは目に見えないので、まずは見えるかたちにします。
あとは、価値がわかるように伝えることが大事です。例えばバッテリーがどれだけ強化されたかも大事ですが、「こういうふうに使ったらもっといいのに」といったことはまさにサービスの情報です。目に見えないサービスの情報が、可視化されてお客さんに伝わっていない。バッテリーであれば、バッテリーが持っている100の魅力のうち、多くのユーザーは30ぐらいしか使ってくれていない。残りの70の使い方がわかれば、もしかしたら家事はもっと面白くなったり、もっと褒められたり、もっとみんなでできるかもしれないという可能性が見えてくるのではないでしょうか。ですから、まずは可視化をする、見えるかたちにすることだと僕は思っています。
神原 たしかにそうですね。どこまで家事に置き換えられるかはわかりませんが、可視化は大事ですね。
松井 もう一つは、やはりサービスは体験してみないとわかりません。疑似体験でもいいので、体験型で価値を実感するのもいいと思います。例えば、丸投げのメンテナンスだと当たり前になってしまうので、ユーザーに「こういうメンテナンスを普段やっておくとより良いですよ」と一部をセルフサービス化して、自分でやれる状況をつくってあげるのです。少しやってみることでプロの仕事の価値がわかるようになります。「これってけっこう大変だな」「あの時間であの作業ができるのはすごい」とわかるようになるので、体験型で価値を伝えることも家電と繋がるのではないでしょうか。
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インサイトナウ編集長対談
2022.08.12